COP25報告:史上最長の延長COP、3つのハイライト

【2】(3)全ては「野心強化」のために:COP25で決まった野心に関する決定

COP25は、会場の内外で挙がる、気候危機とそれへの対応を訴える声に応えることが期待されていました。

COP25開会のスピーチにおいて、アントニオ・グテーレス国連事務総長も「各国は、パリ協定の下での約束を誠実に守るだけでなく、野心を大幅に強化することが必要です」と呼びかけました。議長国であるチリのシュミット環境大臣も今回のCOPを「野心の」COPにしたいと述べていました。

この「野心強化」に向けた気運を盛り上げるため、2019年9月にグテーレス国連事務総長主催で開催された国連気候行動サミットにおいて、COP25議長国チリ主導で野心のための気候同盟(Climate Ambition Alliance)が結成されました。

そのCAAに参加する国々のうち、2020年までに削減目標を強化して再提出すると宣言している国は73カ国あり、加えて、国内で検討を始めた国が11カ国あります(12月11日時点)。

この計84カ国の中に、日本は残念ながら含まれていません。他方、国内検討を始めた「11カ国」の中には欧州各国が多く含まれており、実際に、12月11日、欧州委員会から、「欧州グリーンディール」という、削減目標引き上げ(現行の40%削減から50〜55%削減)への提案を含む一連の政策が発表されました。

会期後半には、マーシャル諸島やコスタリカなど、島嶼国や一部の中南米諸国からなる高い野心連合(High Ambition Coalition)と呼ばれる国々のグループが記者会見を開き、国別目標(NDC)強化の文言を出すことを支持。

その内外からの声に、COP25がどのように応えるかが、会議後半では注目されましたが、会期を1日延長した12月14日土曜日朝、議長国チリが出してきた妥協案に、会場内では失望の声があがりました。野心強化に向けた文言が極めて弱い形でしか入っていなかったからです。

途中経過報告の総会では、その議長案に対して、島嶼国、後発開発途上国、EU、ノルウェー、スイス、AILAC(コロンビア、コスタリカなどの中南米国グループ)が、国別目標(NDC)強化を入れるべきだとの声を挙げました。

その後も続き、夜を徹した交渉が行なわれ、会期延長2日目12月15日の未明に出てきた議長案は、なんとか、間接的な表現ではあるものの、各国に現状の努力とパリ協定の長期目標のギャップを検討した上で、「可能な限り、最も高い野心」を反映させることを呼びかける内容となっていました。

直接的に目標引き上げを語る強い文言ではないため、決して、会議場の外から湧き上がった声に充分に応えているとはいえませんが、それでも、多国間交渉の難しさを乗り越えての、野心強化のメッセージが出された意義は大きいといえます。

■【3】非国家アクターの動き

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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