アフガンでは、折しも米国の歴代政権が軍事作戦が米国に有利に進んでいるかのように見せかける情報操作をしていたとする内部文「ワシントン・ペーパー」が暴かれました。米軍が撤退を余儀なくされるほどの混乱した情勢にもかかわらず、中村さんを前線に立たせたものは何だったのか。
本人のアフガンにかける強い思いはもちろんあったでしょう。ひょっとするとアフガンの土になる覚悟を固めていたのかもしれません。しかし、周囲に様々な思惑や過度の期待感がなかったか。中村さんはそのすべてを黙って引き受けたかに見えます。
やさしさ、責任感、そして勇気、それが彼の美点でした。その美点ゆえに命を落としたのだとすれば、これ以上の悲劇はありません。
中村さんの殺害犯にどんな正義があるのかわかりませんが、犯人を許すことはできません。中村さんの遺志を受け継ぎ、社会に貢献しようとしている若者たちのためにも、私たちは、ここに、ひとりの善の実践者がいたことを後世の人にしっかり伝える義務があると肝に銘じたい。(完)