インドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務

さらに、これら企業が管理している植林地が多数の森林火災の発生地域となっていることが確認されています。特に泥炭地を開発した植林地は、森林火災に対して脆弱になって気候リスクを高めています。

RANはインドネシアのNGOと『終わりなき煙害:インドネシアでの紙パルプ生産、泥炭地、火災リスクの将来(英語のみ発表、Perpetual Haze:Pulp Production, Peatlands, And the future of Fire Risk in Indonesia)』というレポートを11月に発表し、2019年の森林火災における製紙会社の責任について報告しています。

そのレポートによると、植林管理区域内の火災警報の4割が泥炭地で発生しており、火災警報数が多い8社を見ると、泥炭地での発生が6割に達しています。その内の6社がAPPの関係会社で、今回のレポートで火災警報が最も多く確認されたのも南スマトラのAPP関係企業です。

この企業は2014年の火災被害で損害賠償の判決も下されており、2015年には管理地内の35%に達する3万7千ヘクタール以上の火災が起きて大問題となった際、APPはこの企業との関係性を否定し、所有と運営において独立した会社であると責任逃れの姿勢をとっていました。

しかし、その後AP通信の報道やNGOによる関係企業をめぐる不透明性についての追求を受けて行った監査報告で、今年ようやく「重大な支配力」をもっている会社と認めました。

2015年の火災以降、APPやAPRILは火災への取り組みを行っているものの、今のところ泥炭地を利用し続ける方向にあり、泥炭林回復への大きな動きは見えません。上述の8社の植林管理区域内での火災警報発生の半数が2015年の大火災を受けて設定された泥炭保護地域ということも報告されています。

APPはその製品を「地球にやさしいコピー用紙」などと宣伝していますが、全く理解できません。さらに広大な植林地開発のために地域住民との数百にのぼる土地紛争に直面しているとされ、多数の未解決紛争を抱えつづけています。

APPが解決したと報告している村の名前や内容は公表されておらず、確認することはできていません。この問題については10月に『紛争パルプ材植林地』というレポートをNGOが発表しています。

APRILについては、11月に同様の土地紛争に関するレポートを発表しました。

両社ともに、最も信頼されている国際森林認証制度である森林管理協議会(FSC)からは、合法性確認、森林保全や土地權や労働権を含む人権尊重というFSCの価値に合致していないということで、絶縁措置(Disassociation)の対象企業となっており、FSC認証を得ることができない状態が続いています。

特にAPPについては、関係企業の不透明性問題が解決されないために、昨年の夏以降、この絶縁措置を解除するためのFSCへの復帰の議論も凍結となっています。

現地のNGOは、これら製紙企業が約束している森林減少ゼロや泥炭地管理、土地紛争の解決に関するコミットメント(2013年のAPPの森林保護方針、2015年のAPRILの持続可能な森林管理方針2.0)の実施が、信頼のおける独立した検証によって確認されるまで、これらの製紙企業グループとの取引を行わないよう強く推奨しています。

日本のメガバンクとの関係

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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