ペットボトル削減は「亀の歩み」:ニューヨーク

2020年3月から、スーパーマーケットでのプラスチック製買い物袋の配布が禁止になる米ニューヨーク。一方、ペットボトルはどうだろうか。 環境問題に意識的な企業や人たちにより、削減への取り組みが地道に進められているが、行政単位としては亀の歩みといったところだ。(米ニューヨーク=安部かすみ)

山のように売られている、ペットボトル

英ガーディアン紙による分析(2017年)によれば、世界中で購入されているペットボトルの飲料水の数は、毎分100万本にも上るそうだ。その数は2021年までにさらに20%増加すると言われている。

さらに、ペットボトル飲料水を販売している世界上位6企業で、リサイクルされたペットボトルが利用されているのは平均わずか6.6%足らずと、環境問題への深刻な懸念が世界規模で高まっている。

■NYの私大ではペット飲料水販売停止も

束で買えばさらに安くなる

2020年になったが、ニューヨークではスーパーやドラッグストア、またはオンラインオーダーでも、相変わらずペットボトルが市内の至る所にあふれている。

行政が推し進めているプラスチック問題への取り組みとしては、3月1日からスーパーや小売店でのビニール袋の配布が禁止になることが今年の大きなエポックとしてまず挙げられる。

しかし、話がペットボトルとなると、勢いが止まってしまう。ニューヨーク市議会では今後、公園、ビーチ、ゴルフ場での使い捨てペットボトルの販売禁止を検討していく予定だとしているが、具体的にはまだ何も決まっていない状態だ。

ただし在住者目線では、近年、マイボトルやマイマグカップを持ち歩く人を街でよく見かけるようになったと実感している。これはスターバックスなど一部の企業でマイマグを持参すると割引があるなど、企業の地道な取り組みが一因になっていることは否めない。

スタートアップのリーフィル(reefill)やタップ(Tap)などの誕生もその一例だ。同社は市内各所に給水所を設置し、会員はマイボトルを持参し、アプリで操作して給水する仕組みを開発した。ただ給水所は増えておらず、「サブスクリプションで水を配給する」ビジネスは、ムーヴメントとして広がっている実感はない。

また給水所という点では、ニューヨーク市も具体的に進めているものがある。市は2015年から2025年の間に、500カ所の公共給水所の設置を目指しているのだ。

市内5区の公立校や公園から設置を進めており、今後は一般の人々もよりリーチしやすい場所への設置が肝となる。

具体的に、シングルユーズ(持ち運び用の)ペットボトルの飲料水の販売を停止した学校もある。私立ニューヨーク大学では今年1月1日から、それらの販売を止めた。同校では、2040年までにカーボンニュートラル(炭素中立、炭素循環量に対しての中立)を目指しており、今回のペットボトルの販売停止はその一環だ。

同校の発表では、2007年以降、炭素排出量を年間約5万9000メトリックトンの量にあたる30%の削減に成功しているそうだ。今回のペットボトルの販売停止は、年間消費量33万本にも上る校内でのペットボトルの削減に大きく期待がかかっているのだ。

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