思わぬ気候変動リスク「グリーンスワン」に備えを

欧州では、2015年9月にイングランド銀行(英中銀)マーク・カーニー総裁が、気候変動による壊滅的影響を「ホライゾン(領域)の悲劇」と呼び、「地球温暖化の損害は、中央銀行のホライゾン(領域)を超え不確実にやって来る」と警告した。

これも契機となり、2015年12月、金融安定理事会(FSB)は、気候変動は金融システムに対して大きなリスクとの認識を持ち、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を設置した。

2017年12月には、気候関連リスクへの金融監督上の対応を検討する中央銀行・金融監督当局のネットワーク(NGFS:Network for Greening the Financial System)が設立された。NGFSに、金融庁は2018年6月、日本銀行は2019年11月に加盟している。

「グリーンスワン」公表後、各国の中央銀行は気候危機が金融システムの不安定化の要因との認識を高め、気候変動を考慮したストレステスト(健全性審査)の実施、検討を開始した。

具体的には、オランダ中央銀行が現在実施中で、フランス中央銀行、英国中央銀行が各々2020年、2021年からの実施を決定し、欧州中央銀行(ECB)は検討中である。

「グリーンスワン」はいつ起きるかは不確実だが、確実性が高く、要因は「二酸化炭素の温室効果による気温の上昇」と明確だ。日本銀行は今、新型コロナウイルスという「ブラックスワン」対応の真只中だが、将来に向けての「グリーンスワン」対策も必至である。

気候変動対策を通じ、価値が大きく損なわれる座礁資産の急増や、投資家の座礁資産投げ売りから金融危機が起こることを想定し、「グリーンスワン」に備えることが、中央銀行・金融監督当局としての日本銀行、金融庁の使命ではないか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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