NZも「非常事態」宣言、大学まで一斉休校

■ 警戒レベル最高の「4」へ

ニュージーランドでは、新型コロナウイルスに対して、独自の警戒レベルが導入され、それに基づき、リスク評価が行われ、対策が立てられている。レベルが上がるということは何が起こっているのか、各々のレベルでは、どのような策が講じられるのかが明確になっている。

3月21日の警戒レベル導入の時点で、レベルはすでに、「1」を飛ばして「2」に上がっていた。「2」は、「(感染の)削減(の必要性あり)」と位置付けられ、「感染拡大は抑えられているが、市中感染の危険性が高まっている状態」だ。

2日後の3月23日にはレベル3に引き上げられ、その際、向こう48時間以内に、「3」から最高レベルである「4」に切り替わることが明言された。3月26日から始まったレベル4は少なくとも4週間は継続される予定で、現在も続行されている。

レベル4は、「排除(の必要性あり)」とされ、「感染拡大を食い止められていない」と判断される。全国民に対し、「世帯単位で自主隔離を行うこと」、「教育機関や企業の閉鎖」、「食料などの必需品の配給や施設接収の可能性」、「人の移動に対しての厳しい制限」などが義務付けられている。

ただし、「生活に不可欠な物品やサービスを提供している」と認められているスーパーマーケット、病院、薬局などは開いている。

■ 町も道路もガラガラ

予告後48時間でレベル4に入った人々は実施後約1週間経った今も、とまどいが隠せない。世帯単位での自主隔離は誰も経験したことがない生活だ。

道路事情の変化は驚くべきものだ。いつもであれば、朝夕のラッシュ時に長い列を作る都市部の高速道路はガラガラ。移動にかかる時間は通常の約半分で十分だ。世帯ごとの自主隔離を行う人が、頻度を最低限に抑えながらも買い物に出かける車と、必要不可欠な商品やサービスに関連する車が走るのみ。子どもを学校へ送迎する車や、通勤する人の車がないだけで様子は劇的に変化した。

どこまで行っても誰もいない商店街の一角

いつもは往来が絶えない目抜き通りも同様だ。両脇に並ぶ店舗は閉店し、歩く人はぽつりぽつりいる程度。常に活気を帯びていただけに、シンと静まり返った風景は不気味にさえ感じられる。

スーパーマーケットでは、最初の感染者が確認された2月末から最近までパニック買いが目立った。今は客同士の小競り合いはなくなったものの、依然として棚のあちらこちらに空きがある。これは商品がないわけではない。棚に商品が並ぶスピードが、依然として続く、人々が商品を必要以上に購入するスピードに追いついていないのだ。

店外では、順番待ちする人が約2メートルのずつ間隔を空けて並ぶ。店内で客同士の距離が保てるように人数制限が行われている。

人によっては自主隔離だからといって、各スーパーが行うオンラインショッピングを多用。利用者が急増し、同サービスを最も必要とするシニア層が利用できないという事態に陥っている。そこで大手チェーンスーパーのカウントダウンは70歳以上の客の注文を優先的に取り扱うサービスを開始した。

■ 必要なのは、連帯意識

発表された、一般市民向けの行動指針に触れられているように、世帯に1人、代表者を決め、買い物などの外での用は代表者が行い、頻度も極力抑えるということで、食料品などの買い物に出ることは許されている。またほかの人との距離を置くことを条件に、誰もが散歩などの外出をすることも可能だ。しかし、この指針は意味の取り方次第で内容が変わってしまうという指摘がある。

例えば、外出。政府側は、自宅の近所での散歩やジョギング程度と考えているのに対し、車に乗り、少し遠くの公園でやってもいいと考える人もいる。また近所であれば何をしてもいいというわけではない。毎日の会見時に、アシュリー・ブルームフィールド保健省代表が、近所の緑地でのフリスビーの可不可について、フリスビーを介してウイルス伝染の危険性があるのがわからないのかと、叱責した一場面もあった。

海で泳いだり、ボートに乗ったりするのも禁止だ。新型コロナウイルス発生で、医療救急サービスのキャパシティははすでに逼迫している。溺れる人やけが人が出れば、その負担はさらに増える。けが人を出さないよう、皆が注意すれば、医療救急サービスはウイルス感染者の対応に集中できるようになる。

閉店しているカフェのウィンドーには「お互い親切に接しよう。『キアカハ』NZL」と手書きのメッセージが掲げられていた。「キアカハ」は先住民マオリの言葉で、「強くあれ」という意味がある

警察は、人々が世帯単位での自主隔離を実行しているかどうかの確認するために人員を増やし、通りを巡回している。人々と話をし、自主隔離の重要性を理解してもらうのが目的だ。しかし、問題行動をやめない人を逮捕し、拘束することもやぶさかではない。国家非常事態宣言と同時に、警察にはこうした権限が与えられているのだ。

レベル4になってから1週間経つか経たないかで、初日には見られなかった、自主隔離を行わない人が増えてきた。政府は、違反者を一般市民が通報するのに便利なウェブも用意した。

警察の広報官によれば、人々に理解してほしいのは、決して難しいことではないという。「自宅での自主隔離が、人の命を救う」という一言に尽きるという。政府が掲げる標語は、「ユナイト・アゲンスト・COVID-19」、「新型コロナウイルス感染症に団結して立ち向かおう」。迅速なワクチン開発が重要なのは言うまでもないが、現段階では、皆が一丸となることも事態収束の鍵を握っている。

3月31日現在、感染が確認されたのは552人で、死者が1人出ている。

mari

クローディアー 真理・ニュージーランド

1998年よりニュージーランド在住。東京での編集者としての経験を生かし、地元日本語月刊誌の編集職を経て、仲間と各種メディアを扱う会社を創設。日本語季刊誌を発行するかたわら、ニュージーランド航空や政府観光局の媒体などに寄稿する。2003年よりフリーランス。得意分野は環境、先住民、移民、動物保護、ビジネス、文化、教育など。近年は他の英語圏の国々の情報も取材・発信する。執筆記事一覧

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キーワード: #CSR#SDGs

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