書評『海耕記:原耕が鰹群に翔けた夢』

アンボンで鮮魚を鰹節・缶詰に加工、日本や欧米へ出荷する輸出商品型漁業のビジネスモデルだ。今でいうグローバル・サプライチェーンの構築。

ただ、空間により支配するものが違う。中央は国益・国策、駆け引き。地方はナショナル・エコノミーによる翻弄、生活の安心や安全の確保。国境を接し、超え形成する市場は、国際・民際関係での慣習や法、市場の論理が支配。これらは影響を及ぼし合う。

耕にとって、中央で漂う南進論は追い風。生餌(鰹釣りの餌)確保、他国での漁業権や合弁会社の法規制などは向かい風。もがき苦しみ空間を往来するエピソードが語られる。

後に日本経済の主役となる企業を生み、育てた中興の祖たちの眼差しは内だが、耕は外。鹿児島からアジアへ。耕に触発されたであろう沖縄の漁民も南洋に乗り出す。海を取巻く地域が動く。

耕が目指した漁業基地構想の事業規模は壮大だ。現在価値で初年度投資4.1億円、売上5.8億円、営業利益1.7億円。83億円まで増資、売上157億、営業利益47億円の事業。倍々ゲームで、6年で目標達到の計算だ。事業計画は強気、でも前提条件となる資金調達、漁業権や生餌の交渉などは詰めが甘い。

alternasyohyou

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キーワード: #SDGs

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