新型コロナで「脱プラスチック」に異変(NY編)

人はパンデミック下でプラスチックに頼らざるを得ないか

それが、だ。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行で、状況が一変した。

州で初の新型コロナ感染者が確認されたのは3月1日。3月半ばには感染症例数が一気に増え、多い時で1日1万件を超えるほどになった。

ロックダウン(自宅待機)を開始して1ヵ月経った今では、入院患者数や死者数の増加は最悪期に比べると抑えられているが、それでも毎日3000件以上の新規感染症例や200人以上の新たな死者が出続けているわけだから、流行のスピードが遅くなったというだけで、依然パンデミック状態にあることは変わりない。

このような状況で、州の環境保護局は、せっかく開始した「脱プラスチック戦略」の施行日を5月15日まで延期することを発表した。

延期の理由の1つに、多くの小売店からまだ移行への準備ができていないと反発があり、訴訟問題に発展していたこともある。しかし実際のところ感染爆発により、裁判どころではなくなったというのが実情だ。

また何度も使い続けるマイバッグは、洗濯しなければウイルスや細菌がたまりやすくて不衛生だ。それらを持参したところでレジ係員との間でウイルスが媒介する恐れがあるため、店側も率先して延期を決めた。

実際のところ「生きるか死ぬか」の段階になると、脱プラやサステイナブルなんて言ってられなくなるというのは、筆者自体が身を以て感じたことだ。3月下旬以降のニューヨークは朝から晩まで1日中救急車のサイレンが鳴り響き、遺体を置く場所がないため大型冷凍トラックが何台も病院に横付けされるような状態だった。

レストランでは持ち帰りかデリバリーのみとなっている。入れ物は本来なら紙製か環境に良いコンポスト容器が主流になるはずだったが、実際には以前のようなプラ製容器も復活している。

医療現場では、ウイルス対策としてビニール製の手袋や防護具、飛沫を防ぐプラスチック製フェイスガードなどが主流だ。

レジ袋の配布停止の延期期限である5月15日は、ロックダウンの解除が予定されている日でもある。しかし冒頭で述べた通り、感染の流行は一向に収まっていないため、レジ袋の配布停止の期限もロックダウンの完全なる解除も再度延期される可能性は充分高い。

パンデミックは環境問題への新たな挑戦を一掃し、グリーン都市への歩み寄りはあっさり立ち消えた。しかし一方で、コロナにより世界中でCO2の汚染が減り、地球環境が改善されたという報告もあるのだから、何とも皮肉なものである。

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