『地球に住めなくなる日』著者インタビュー(中)

■ ノーベル賞学者が「気候版WTO」を提案

――気候変動問題は、もっと企業やビジネス界が動き、社会を巻き込んでいく必要がありますね。

2018年にノーベル経済学賞を受賞したノードハウス・イェール大学教授は気候に関して、クライメイト・クラブを提案したが、それは基本的には気候版WTO(世界貿易機構)です。自由貿易を通じて、脱炭素化する国には報酬を与え、逆行した国には罰則を与えるシステムです。

1980年代の米国とロシアの間にあった核不拡散条約の「気候版」を締結するのも有効でしょう。米ソ両国が世界の核兵器の保有数を牽制し、劇的な変化をもたらしたように、米国と中国が一緒に気候変動に関する政策に取り組めば、両国に経済的に依存する国々も追随します。

――デイビッドさんは、2050年の気候危機について楽観的ですか、それとも悲観的ですか。

デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏(C)Mike McGregor

楽観的か悲観的かは、見方によるものだと思います。地球の平均気温が1℃温度上がるだけで、人類は歴史上、経験したことのない気候条件にさらされます。新しい条件下で生き残るためには、どんな選択をしたらいいのか、苦しい選択を迫られます。

前例をみない台風、ハリケーンや干ばつや火事や熱波が近年では、毎年起こっています。今後はさらに気温が上昇するでしょう。脱炭素化で2℃の上昇にとどまるかもしれませんが、それは良い方のシナリオです。

この変化は、「気候崩壊」(catastrophic warming)とか、気候の大量虐殺(genocide)などと呼ばれ、2℃上昇なら1億5千万人の人が大気汚染で亡くなるでしょう。南アジアや中東の主要都市では、猛暑で人が外を歩けなくなります。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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