『地球に住めなくなる日』著者インタビュー(下)

■ 迅速な「脱炭素」化は、むしろコストが安い

――どの国にも環境問題に興味がある人、ない人が分断や対立をしているように見受けられます。分断や対立を乗り越えるには何が必要だと思いますか。

ある調査では、環境について大多数の人が問題意識をもっていることが分かりました。もちろん、気候変動に伴う大規模な構造変化に反発する人や、気候変動に関する政策に懐疑的な人もいます。

多くの政治家にとっては、脱炭素社会への政策が巨額の資金を要すると考え、選挙のアジェンダを見直さなければならなくなるからです。

以前、エコノミストたちは、気候変動対策には費用がかかるのは仕方ないとしていたが、この見方も近年変わりつつあります。「一刻も早く脱炭素化を実現すること」は、「ゆっくり脱炭素化を進める」よりずっと経済的であることが分かったのです。

2030年までの脱炭素化投資の利益は26億ドル(約2800億円)になるといわれ、投資回収も5~7年以内と公共投資のなかでも短期間で回収ができることが分かりました。

長年、ビジネス業界や保守派は、気候変動の対策に対して、高い費用がかかると考え、環境活動家に正当化するよう求めてきました。投資総額にかかるコストに利益が追い付いていないと思われがちでしたが、近年はそれがそうではないことが分かってきました。

むしろ一刻も早く脱炭素化する方が、未来のため、この先何世代にも引き継がれる健全な経済発展のために有益であり、今後壊滅しそうなシステムをとるよりも正しい選択をすることになるでしょう。この提案は魅力的で、旧来の抵抗を弱めるはずです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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