コロナ禍がもたらした「プラス」とは?

オンラインの可能性に気が付いたのは典型だ。「対面の会議やインタビューができない」と嘆くのではなく、「オンラインで全国規模の会議が開催できた」「地方との交流が促進された」と難局を前向きにとらえられるのだ。これまで接点のなかった顧客と新しくつながる機会になったとの声まである。オンライン・カフェやリモート料理教室、スポーツ教室も新しいアイデアだ。「オンラインなら遠くの人と話せる」というレベルから、距離という意識そのものが消えたしてしまった世界である。

新しい働き方、暮らし方では、密な都会を避け、環境のよいところでのリモートワーク、ワーケーションを求めて、移住、空き家探し、コワーキングスペースの利用に関心が高まり、事業展開に順風が吹いている分野もある。

画面の会議はリアルではなくデジタルだ。無意識のうちに「AI・デジタル社会」のとば口に立っているといえる。もうひとつの世界「ミラーランド」との共存の時代である。そう考えれば、事業展開の可能性は無限だ。介護や接客がロボットが参加するのも間近に違いないし、とんでもない画期的な製品・サービスが出てくるかもしれない。

コロナ禍は医療や介護への理解を深めたことは間違いないが、これまで漠然としか見えていなかった貧困、格差などの社会課題を白日の下にさらし、社会の分断を露わにしている。社会起業家は既にそのことに気づいている。

ネット授業に対応できるように貧困家庭にパソコンを貸し出す事業をNPOが始めた。横浜では、飲食店を地域が支援するリビングラボの活動も広がっている。お金の支援は大事である。しかし、それは行政でもできる。社会起業家に期待されるのは、人と人がつながる心の通った支援である。

具体的に、彼らが何を考えているのか、このアンケートではまだ十分には明らかになっていない。これからのコロナの影響に対する施策としては、「既存商品、サービスの提供法の見直し」「新たな商品、サービスの開発」がともに80%超で最上位となっている。彼らがどんな新製品、新サービスを創り出してくれるのか、今から楽しみである。  (完)

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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