「ネオニコ問題は決して解決していない」②

農薬入り花粉ペースト投与群の致死率高い

【2011年度:2011年7月9日~2012年4月2日(269日)石川県志賀町 農薬の摂取経路の蜂群への影響】[2]

2010年度の実験において、ネオニコ(DF)を糖液と花粉ペーストの両方を介して蜂群に投与していたが、該農薬をエネルギー源である糖液を介して投与した場合とたんぱく源である花粉ペーストを介して投与した場合とで、該農薬の蜂群への影響に違いを生じるかもしれないという疑問を解決するために、長期野外実験を行った。

この実験での農薬濃度は、糖液中では1ppmと10ppm、花粉ペースト中では0.565ppmと5.65ppmとした。この実験においても、前回と同様に、蜂群がCCDの状態を経由して滅亡に至ることが確認された。

農薬入り糖液投与群と農薬入り花粉ペースト投与群は、滅亡までの一匹当たりの蜂の農薬摂取量に極めて大きな相違があることが分かった。すなわち、農薬入り花粉ペースト投与群は農薬入り糖液投与群の、農薬濃度に関係なく、約1/5の農薬摂取で滅亡することが明らかとなった。

このことにより、農薬摂取の主な対象者が農薬入り花粉ペースト群と農薬入り糖液群とでは異なるのではないかと推定した。すなわち、タンパク源である花粉ペーストは主に女王蜂や蜂児が摂取し、エネルギー源である糖液は主に成蜂が摂取すると推定した。

このような仮説から、農薬入り花粉ペーストの摂取による、女王蜂の産卵能力の低下や異常卵の産卵等および蜂児の虚弱体質化や羽化率の低下等が、長期間に亙って生じると考えられる。

一方、農薬入り糖液は主に成蜂が摂取すると考えられるので、農薬の蜂群への影響は極めて限定的となることから、滅亡するまでの蜂1匹当たりの農薬入り糖液による農薬摂取量が農薬入り花粉ペーストよりも多くなったと考えられる。

ただ、CCD現象や農薬投与媒体の差などは、ネオニコが長期間に亙って効能を維持し続けるという特性によるものであると推定できる。

【参考文献】
[1] Toshiro Yamada, Kazuko Yamada, Naoki Wada: 臨床環境医学誌 , 21(1):21-23 (2012).
 http://jsce-ac.umin.jp/jjce21_1_0.htm
[2] Toshiro Yamada, Kazuko Yamada, Yasuhiro Yamada: Journal of Biological Series, 1(3):84-107 (2018).
 https://www.academiapublishing.org/journals/jbs/abstract/2018/Jul/Toshiro%20et%20al.htm

「ネオニコ問題は決して解決していない」③に続く

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山田 敏郎(金沢大学名誉教授・学術博士)

金沢大学大学院工学研究科修士課程修了。 東洋紡績㈱犬山工場勤務を経て1988年より同社総合研究所主席研究員。2014年よりプラスチック成形加工学会に論文編集委員として所属。現在、金沢大学名誉教授・学術博士。専門は化学工学、養蜂。

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