「ネオニコ問題は決して解決していない」⑥

【農薬に暴露された蜂群の見かけの寿命のマウイ島と志賀町の比較】[7]

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マウイ島の自然保護区に囲まれた無農薬マカダミア林の一画

新たに提案した見かけの寿命を推定するための数学モデルを用いて、マウイ島での長期野外実験で得られた成蜂数と蜂児数の実験データから見かけの寿命を計算した。

マウイ島での蜂群の見かけの寿命はバラツキが大きいものの、一年を通して、ほぼ一定である。これは、気候の変化の小さいことと年中開花しており、いつでも食料を調達でき、女王蜂の産卵も一年を通して大きく変化しないことによると考えられる。

中西部の日本(志賀町)と比べてみると、日本では見かけの寿命のバラツキは少なく越冬時には6~10倍近くも長くなるのに対し、マウイ島ではバラツキは大きいものの、一年を通してほぼ一定である。一方、マウイ島での見かけの寿命のバラツキを詳細に解析して、無農薬群や有機リン投与群においては蜂群の生理現象で説明できると考察している。

たとえば、女王が居なくなる蜂群では見かけの寿命が長くなっている。あるいは、なんらかの理由で女王の産卵が少なくなっている場合でも寿命が長くなっている。一方、ネオニコ投与群においては、このような説明ができず、何か異常が生じていることが示唆される。

【農薬含有花粉ペーストを摂取するダニ被害蜂群の見かけの寿命】未発表のため内容非公開
花粉を介して農薬(DF)を摂取した蜂群の見かけの寿命の季節変化の特異性は、ダニの被害のない蜂群でもダニの被害を受けた蜂群でも、あまり変わらない。

[7] Toshiro Yamada, Kazuko Yamada: PeerJ, 8:e9505 (2020).
https://peerj.com/articles/9505/

「ネオニコ問題は決して解決していない」⑦へ続く

yamada_toshiro

山田 敏郎(金沢大学名誉教授・学術博士)

金沢大学大学院工学研究科修士課程修了。 東洋紡績㈱犬山工場勤務を経て1988年より同社総合研究所主席研究員。2014年よりプラスチック成形加工学会に論文編集委員として所属。現在、金沢大学名誉教授・学術博士。専門は化学工学、養蜂。

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