トヨタの「問題解決」:真因の追求が有効な対策に

トヨタ財団は10月19日、「2020年度 トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の第5回をオンラインで開催した。トヨタ自動車の問題解決手法をNPOに伝えることで、組織力の強化や社会課題の解決に役立ててもらうことが目的だ。今回のテーマ「対策立案」は、要因解析で探った真因を解決するための対策を立てるステップだ。これまでの問題解決の取り組みをA3資料にまとめ、グループ内で中間発表も行った。(オルタナ副編集長=吉田広子)

カイケツでは、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因分析」「対策立案・実施および効果の確認」「標準化」など、問題解決の一連のステップをA3用紙1枚にまとめていく。立てた対策の効果を確認し、それを定着させることまでを目指す。

「対策立案」は真因に対する対策内容を整理して、実行計画を立てるステップだ。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案に取り組んでいく。

■環境事業を収益化し、沖縄の自然守る

特定非営利活動法人おきなわ環境クラブは「散乱ゴミ」の調査も実施している

カイケツに参加する特定非営利活動法人おきなわ環境クラブ(沖縄県那覇市)は、美しい海岸やマングローブ林で育まれる多様な生態系など、沖縄の環境価値と暮らしとのつながりを人々に感じてもらい、保全したいと思う心を育もうと活動を続けている。

那覇市と豊見城市の間にあるラムサール条約登録湿地「漫湖」を拠点に、環境学習プログラムなども実施する。

同NPOの立田亜由美事務局長は、組織の課題として「明確な到達目標や成果、マイルストーンを設定した事業運営が行われていない」と感じ、カイケツへの参加を決めた。特定の組織からの業務委託に資金を依存する運営体制に対する危機感もあった。

そこで、カイケツでは「みんなで企画立案、能力向上作戦」をテーマに掲げ、事業担当者が企画立案できる状態を目指す。

立田事務局長は「環境保全は、ボランティアという印象が強く、収益化が難しい。事務局長になった当初、団体としては本来の活動趣旨と多少異なる事業であっても、資金を得るために手あたり次第になっているところもあった」と振り返る。

10年ほど前から少しずつ運営体制の見直しを図り、自分たちの「アイデンティティー」となる事業の開発に取り組んできた。現在力を入れているのが、「散乱ゴミ」をテーマにした環境教材の開発だ。

立田事務局長は「『捨てた』という意識がなくても、意図しない形でゴミは陸から川へ、川から海へと流れついている。『散乱ゴミ』の現状を広く知ってもらい、まずは『捨てない』『自分のごみは自分で拾う』といったところから習慣化してもらえるような教材をつくっていきたい」と意気込みを語る。

「今後、当団体の可能性を広げ、自分たちが本来やりたい事業を実現していくためにも、寄付金、自主事業、受託事業の収入バランスも整えていきたい」と続けた。

■「人がいない」では解決しない

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..