小田急、循環経済の取り組みで北欧ファンドから選定

小田急電鉄はこのほど、フィンランドの公的イノベーション・ファンドによる「世界を変えるサーキュラー・エコノミーソリューション」に日本企業・団体として初めて選定された。選定を受けた事業は、同社が神奈川県座間市内で推進する「循環型コミュニティの創出」への取り組みだ。舞台となった「ホシノタニ団地」は、築50年の同社社宅を改築した。(オルタナ編集部・松田ゆきの)

ホシノタニ団地の外観(神奈川県座間市)

このイノベーション・ファンドは「シトラ」(フィンランド・イノベーション基金)の名称。1967年の創設で、フィンランド議会が管轄する国立の組織だ。基本姿勢はサステナビリティの推進で、フィンランドの全省庁、民間企業、消費者と行動をともにする。

シトラは同国を代表して2016年から2025年までのサーキュラーエコノミーのロードマップを作成した。さらに、2016年10月から2019年2月まで、フィンランド国内の企業124社を「サーキュラーエコノミーで影響を与える企業」として選定した。

2020年4月からは、世界中の企業や団体を対象に「世界を変えるサーキュラー・エコノミーソリューション」を募集し、企業や団体を含む全39の事例、うち日本からは小田急電鉄と日本環境設計の2社を選んだ。

小田急電鉄の事例は、神奈川県座間市にある同社の社宅を改築した「ホシノタニ団地」のリノベーションを軸とするもの。築約50年という耐震性の問題で2012年3月に閉鎖した社宅を活用した。社宅4棟のうち2棟全55戸を改築し、神奈川県の木材を内装に使って環境負荷を軽減した。

ホシノタニ団地の内装イメージ

団地形式の社宅は平均37平米と内装が狭いので、間取りを取り払って開放的な空間にした。棟の間隔も狭かったため、駐車場を廃止し、住居の外に庭や菜園などの共有スペースを増設して緑地面積を増やした。

洗濯機を室内に置かないので空間を広く使うことができ、シェアランドリーで交流が生まれる

3号棟の1階には「喫茶ランドリー」という喫茶スペースのあるシェアランドリーをつくった。シェアエコノミーが環境負荷を軽減するだけでなく住居者同士の交流も生むという。

ホシノタニ団地の入居率は2020年6月末時点で94.5%(55戸のうち52戸)で、若い世代の人々が居住することで地域の年齢層の多様化、地域コミュニティの活性化につながると期待する。

ホシノタニ団地は座間市の廃棄物収集の効率化に関する実証実験に携わっており、自治体と地域の事業者など多様な組織と連携している点もシトラが評価した。小田急電鉄は、今後もまちづくりを通じて地域住民や自治体との連携を強化する方針だという。

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