創業40年、鮮魚の姿造りを売り物にする横浜市の日本料理店「きじま」が11月、「ジャパン・サステナブルシーフード・アワード」のリーダーシップ部門のチャンピオンに選ばれた。認証魚の調達状況をウェブで毎月公開し、10月に扱った天然魚では7%がMSC認証品、養殖魚は60%がASC認証品という取り組みが評価された。社内研修でも、『おさかなハンドブック』についてWWFの制作者から学ぶ会に、約25人の従業員が自発的に参加した。(オルタナ編集員=瀬戸内千代)
きじまは「食を通じて持続可能な共同体の創造と発展に寄与する」という理念を掲げている。9月には自社サイトに「きじまオーガニックチャレンジ」というページを設け、国際水産認証品の調達比率などを開示した。
コメは全量が自然栽培米、他の農作物も62%を有機・自然栽培が占める。アニマルウェルフェアの指標として、家畜飼料のポストハーベストフリー(収穫後農産物への農薬不使用)や非遺伝子組み換え、抗生物質不使用、放牧・平飼いなどを挙げ、その達成状況も示している。データは毎月更新するという。
6月25日にオープンした同社6店目の「みなとみらい店」(横浜市)は、飲食店として日本で初めてFSC(森林管理協議会)のプロジェクト認証を取得した。テーブルもカウンターもFSC認証材製で、店内やメニューにMSCやASC,FSCマークが表示されている。
調達に関する社内研修は2019年に開始した。年に数回、専門家を招き、午後の約2時間の閉店中に従業員の自発的な参加を募り、自然資源の現状や認証の意義などを学んでいる。
顧客には積極的に伝えていないが、コメや油、調味料までオーガニックに切り替えたため、「お米を変えたでしょう」「天ぷらがおいしくなった」と声をかけてくれる常連客もいるという。
同社のサステナブル調達を推進している杵島弘晃・事業戦略室長は、「当然ながら原価は跳ね上がったけれど、料理の価格は上げていない。IT導入の効果でカバーできている」と語る。
杵島弘晃室長の父親で創業社長の正光氏が数年かけて導入したオリジナルの社内管理ソフトが労働時間やフードロスを減らし、大幅な経費削減を実現。その下地によって、弘晃氏が2017年に提唱したサステナブル調達を可能にしたという。