米ヒルトン、「パーパスなき企業に明日はない」

日本・韓国・ミクロネシア地区の運営責任者ティモシー・ソーパー代表インタビュー■

創業から100年を迎えたホテル業界世界最大手のヒルトンで日本・韓国・ミクロネシア地区の運営責任者を務めるティモシ―・ソーパー代表は、「パーパスなき企業に明日はない」と言い切る。同社はESG戦略として「トラベル・ウィズ・パーパス」を打ち出し、コロナ禍でもサステナビリティの取り組みを縮小せずに広げてきた。パーパスは企業にとってどのような意味を持つのか、話を聞いた。(オルタナS編集長=池田 真隆、オルタナ副編集長=山口勉)

日本・韓国・ミクロネシア地区の運営責任者のティモシ―・ソーパー代表(撮影:山口勉)

――ヒルトンはESG戦略として「トラベル・ウィズ・パーパス」を掲げています。ESG(環境・社会・ガバナンス)領域に注力することで売上高が明確に上がるとお考えでしょうか。

ヒルトンは119カ国で6600軒以上のホテルを展開していますが、これから成長するにあたって、ESG領域の対応力が肝になります。むしろ、サステナビリティの能力を備えていない企業は成長することができないと断言できます。衰退の道を辿るでしょう。

「トラベル・ウィズ・パーパス」は2011年にグローバルで打ち立てたESG戦略です。2030年までに社会課題を解決する取り組みへの投資を倍にして、環境負荷を半減することが目標です。

この戦略のもと、大小様々な取り組みを行っていますが、規模にかかわらずどの活動も創業者コンラッド・ヒルトンが100年前に掲げた「旅は世界をより良い場所にできる」という理念につながっています。

2011年に戦略を掲げた当時は小さな活動でしたが、10年間取り組みを続ける中で、今や経営の中核を担うまでになりました。

つまり、このESG戦略は創業者のビジョンを達成するために不可欠なもので、実践することが我々の使命なのです。

――「トラベル・ウィズ・パーパス」ではどのような活動を行っていますか。

当初は、ウェイスト・マネジメント(廃棄物削減)という狭い範囲の取り組みから始まりました。その後時代の要請に伴って活動も多様になってきたのです。

現在の活動はグローバルで決めたものとローカルで自主的に考えたものの2種類があります。

グローバルの活動は、各国でサステナビリティを担当する代表が課題を持ち寄り、世界共通で取り組む内容を決定します。同時にローカルでの課題解決に向け、自主的に行う活動もあります。

グローバルで決めたものとしては、災害時の復興を金銭的に支援するための投資を2倍(2017年比)に、使用する水の量や廃棄物の半減(2008年比)、地元・中小企業・マイノリティーが経営するサプライヤーからの調達費用を2倍(2017年比)に上げるなどがあります。

ローカルな活動に関しては、各国の現状に則した形で自主的に考えて実行しています。例えば日本では、沖縄の貧困家庭の子ども向けに食料支援を行ったり、手作りしたマスクを高齢者に配布したりしました。

――コロナの世界的な流行によって、人々の移動が制限されました。ホテル業界も厳しい状況に立たされましたが、「トラベル・ウィズ・パーパス」の活動も縮小しましたか。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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