国交省が住宅政策に意見募集

増加する空き家。総務省の平成20年住宅・土地統計調査(速報集計)結果より

今の住宅に、満足していますか?――国土交通省は、「住生活基本計画(全国計画)」の変更案を公開し、2月16日まで意見を募集している。これは「住生活基本法」に基づくもので、2006年6月に同法が施行されてから5年が経過したのを機に計画を見直すためだ。11年から20年度を計画期間とする変更案は、社会資本整備審議会・住宅宅地分科会(分科会長:越澤明/北海道大学大学院教授)による議論を経て発表された。

■住生活基本法がめざすもの

住生活基本法は、住宅供給を重視した「住宅建設計画法」の廃止に伴い、施行された。「量」から「質」へ、大きな政策転換だった。

戦後、住宅金融公庫や公営住宅制度、日本住宅公団などにより住宅供給重視の政策が進められた。しかし、総務省の調べによると、現在わが国の住戸数は世帯数を約 760万戸上回り、空き家は増加傾向にある。

一方、環境問題、少子高齢化や人口減少、経済情勢の変化など、多様化する住環境を取り巻く問題に対応するため、既存の住宅の改修・保全・利活用をすると共に、ライフステージ(年代別の生活状況)に応じた住宅やサービスなど、ソフト面での改革も必要となった。文字通り、「住宅」から「住生活」へ、従来のハード重視から環境を包括的にとらえた政策へ転換を図ったのだ。

■4つの目標と施策

変更案では、(1)安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築、(2)住宅の適正な管理および再生、(3)多様な生活ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備、(4)住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の確保、を目標として明示した。

(1)は耐震、高齢者対応、省エネルギー、ユニバーサルデザインなどの住宅性能の向上と、景観計画などの豊かさを求める施策だ。(2)は急増する老朽化マンションの維持管理などへの対応策。(3)は個人の価値観やライフステージ、高齢者などの身体機能に応じた住宅を選択できる循環型市場を提案するもので、既存住宅の市場整備や住宅性能表示、長期優良住宅、建物検査などの制度利用を促す。

最終項目の(4)は、低所得者や被災者などに適切な住宅を確保するためのセーフティネットの構築を目指すものだ。

法施行から5年が経過し、住宅履歴のシステム開発や既存建物の改修実験など、政策転換に伴ってさまざまな動きや議論が民間企業・団体では起こっている。不動産・建築業界の有志による会議「hakai 2010」では、2月15日にシンポジウムを行い、同案についての議論結果をパブリックコメントとして発する予定だ。

個人消費者のコメントもまた重要だろう。住宅供給体制や税制など、民主主義国家の市民として、意見表明するよい機会ではないだろうか。(オルタナ編集部=有岡三恵)2011年2月3日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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