外気温ゼロで室温保つ パッシブハウス

その窓の外側には庇やブラインドが付いており、夏や中間期には日射をしっかりと遮蔽する。冷房設備はないが、通年して室内の快適性はとても高い。この建物が一年で使う全てのエネルギー量(暖房・家電・調理・オフィス機器・給湯・換気)は僅か7000kWh。屋根に設置した60㎡の太陽光発電設備がこのエネルギー量を生産している。(註)

スイスの多くの州では、公共建築や公営住宅にはパッシブハウスレベルの省エネ性能が義務付けられている。また最も普及の進むオーストリアでは、既に新築の25%がパッシブハウス技術で建てられている。ちなみにパッシブハウスの平均的な建設コストは従来比で5~10%高いが、助成金が得られる上、一年の暖房費は古い建物の一ヵ月分程度で済む。

日本の気候風土に合ったパッシブハウスを研究し、普及促進に取り組んでいるのが、一般社団法人パッシブハウス・ジャパンである。工務店や設計事務所を中心とした60社を会員に持つ。その一社である島田材木店では、今年1月末に茨城県石岡市にパッシブハウス基準を満たす木造のモデルハウスを実現した。

社長の島田恵一さんによると、このモデルハウスでは2月から暖房することなく、暖かい室内が保たれているという。震災時の体験を島田さんはこう報告する。

「水はない、電気はない、燃料はないという経験をしますと、まだ肌寒い日のある茨城の地で、何もしなくても15度をキープしてくれるパッシブハウスの性能のすごさを実感します。」

この家の販売価格は坪約80万円(129㎡で約3200万円)、寿命は100年は持つという。

建物分野での電気や灯油の消費量を劇的に減らし、健康で経済的な生活の基盤を築くパッシブハウス基準。まずは東北や北海道の公共建築や避難所となる建物から、是非採用していって欲しい。

註:財団法人省エネルギーセンターによると、日本では3人以下の世帯人数で、一世帯あたり4734kWhの電気を消費しているほかに、灯油やガスも消費している。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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