気候変動の観点から「新首相に期待すること」

WWFジャパンの自然保護室気候変動・エネルギーグループリーダー山岸尚之氏

8月30日、野田佳彦新首相が誕生した。自然エネルギー政策や温暖化対策はどうなるのか。国際的な環境保護団体WWFジャパンの自然保護室気候変動・エネルギーグループリーダー山岸尚之氏に「次の首相に期待すること」を寄稿して頂いた。

東日本大震災から半年が経とうとしている今でも、日本にとっての課題は山積みであり、その中でも、エネルギー基本計画の改訂を含む新しいエネルギー政策を作り、気候変動問題解決へ向けて取組みを推し進めることは、極めて重要な課題といえる。

WWFジャパンとして、気候変動・エネルギー政策の観点から新しい首相に期待をしたい項目は以下の8つである。

1.自然エネルギーの普及目標を明確に設定、推進政策を推し進めること

菅前首相は仏ドーヴィルでのG8サミットで、自然エネルギーによる電力の割合を「2020年代のできるだけ早い時期に、少なくとも20%を超える水準」にするという目標を掲げた。最低限、この目標を維持し、できればさらに野心的な目標を掲げることが望ましい。

また、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」によって設立される固定価格買取制度が、その目標をきちんと達成できるものとなるように、制度の運用面でのルール作りを後押しするべきである。

2.省エネルギー目標を掲げること

今年の夏が明らかにしたのは、節電を含む省エネルギーには、まだまだ多くの余力があるということである。無理をして節電をしたところもあったかもしれないが、無駄を見直すことができ、大幅な省エネも意思次第で可能であることがわかった。

原子力発電への依存から脱却し、自然エネルギー中心の社会を築いていくためには、省エネルギーの推進が大前提となる。現在のエネルギー基本計画には、省エネルギーに関する目標が設定されてない。これを明確に設定するべきである。

3.発送電分離を含む電力システムの抜本的な改革を進めること

自然エネルギー推進の大前提として、既存の電力システムの抜本的な改革が必要となる。地域内・地域間の系統連携の強化、発送電分離と電力自由化による電力事業のあり方の改革、電力需給のバランス調整を行なえるような次世代電力網・スマートグリッドの確立などの社会的インフラの整備についても、速やかに議論のプロセスを立ち上げて改善をはかっていくことが必要である。

4.原子力発電所を段階的かつ可能な限り早期に廃止していくこと

新規の原子力発電所建設は行なわないことに加え、既存の原子力発電所を全廃してくための原則・スケジュールも明示していくことが必要である。また、事実上破綻している核燃料サイクル政策の見直しを行なうべきである。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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