金融界が自主行動原則設定へ

エコ企業への支援、災害への備え、コミュニティ活動、省エネなどを金融面で支援することを決めた(写真は末吉竹二郎委員長)

日本の金融界が自主的な活動のガイドライン「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」(仮称)をつくる。15日にその原案がオルタナの取材で明らかになった。同原則に署名した企業は、持続可能性と環境へ配慮した金融活動を行うことを誓約。エコ企業への支援、災害への備え、コミュニティ活動、省エネなどを金融面で支援する。この宣言をきっかけに、金融界の活動が環境配慮に一段とシフトし、それによる経済と社会の変革が期待できる。

金融界の25社の代表者からなる「日本版環境金融行動原則起草委員会」は今年10月までに同原則の最終案をまとめ、来年3月までに日本の金融機関に参加を求める。同委員会は国連環境計画金融イニシアテイブ(UNEP・FI)特別顧問の末吉竹二郎氏が委員長となり、63社の企業がオブザーバーとして参加した。同原則の運営委員会が環境省を事務局にして来年初頭に設置される予定で、署名企業は原則に基づく活動を行うことを同委員会の委員長に誓約する。

原則案は前文と7原則(参考資料参照)からなり、その遵守を誓約する。さらに「保険業務」「運用・証券・投資銀行業務」「預貸・リース業務」の3業務のガイドライン、実務上の指針と事例集もまとめる。

国際金融界では、民間企業が自主的に作成したガイドラインに従って、持続可能性や環境に配慮した金融活動を行うこと宣言する方法が定着している。プロジェクトファイナンスで環境に配慮しない事業には融資をしないとした「赤道原則」、ESG(環境、社会、企業統治)課題へ配慮しない企業などへの投資は行わないとしたUNEP・FIによる「責任投資原則」は国際的な金融活動の重要な指針だ。

日本では昨年に中央環境審議会の「環境と金融に関する専門部会」が金融界の自主ガイドラインを作ることが必要と提言。それがきっかけでこの原則は生まれた。原案の作成では金融庁・環境省が原案をつくる「霞ヶ関製」ではなく、民間からの委員が昨年8月から討議を重ねて自主的に決めた。東日本大震災によって金融界で社会貢献活動への関心が一段と高まった。それを反映して原案では防災、コミュニティの維持などに果たす金融の役割にも言及している。

起草委員会の末吉委員長は「持続可能性の推進こそ21世紀型の金融の取り組むべき方向。

日本の金融界の意識も大きく変化しており、この宣言をきっかけに世界の金融界の動きと重なるだろう。原則が定着することによって、日本の金融、そして経済が変わる」と期待を述べた。(オルタナ編集部=石井孝明)

 

(参考資料)

関連・「21世紀金融行動原則」で示された7原則(案)

1・自らが果たすべき、責任と役割を認識し、予防的アプローチの視点も踏まえ、それぞれの事業を通じ持続可能な社会の形成に向けた最前の取組みを推進する。

2・環境産業に代表される「持続可能な社会の形成に寄与する産業」の発展と競争力の向上に資する金融商品・サービスの開発・提供を通じ、持続可能なグルーバル社会の形成に貢献する。

3・地域の振興と持続可能性の向上の視点に立ち、中小企業などの環境配慮や市民の環境意識の向上、災害への備えやコミュニティ活動をサポートする。

4・持続可能な社会の形成には、多様なステークホルダーが連携することが重要と認識し、かかる取組みに自ら参画するだけではなく主体的な役割を担うよう努める。

5・環境関連法規の遵守にとどまらず、省資源・省エネルギー等の環境負荷の軽減に積極的に取り組み、サプライヤーにも働き掛けるように努める。

6・社会の持続可能性を高める活動が経営的な課題であると認識するとともに、取組みの情報開示に努める。

7・上記の取組みを日常業務において積極的に実践するために、環境や社会の問題に対する自社の役職員の意識向上に努める。

注・ここで言う「予防的アプローチ」とは前文によれば、「不確実性を含んだ科学的知見であっても、環境や社会に重大な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる場合には、率直に耳を傾け、事業活動にも慎重な姿勢で望む」という問題への対処法。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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