EU委員会、50年までのエネルギー・ロードマップ発表――日本の動き止まる

EUの記章

EU委員会は、2050年までに地球温暖化防止のために二酸化炭素(CO2)の排出量を現状から80%以上削減する「エネルギー・ロードマップ」を12月に発表した。

エネルギーの生産過程でCO2の排出がほぼゼロのエネルギー生産を実現することを目標にする。一方で、野田政権からはエネルギー政策をどうするとのメッセージがまだ見えてこない。

■「脱炭素化は可能」、ビジョンを示すEU

EU委員会はロードマップで「エネルギーの脱炭素化は技術的、経済的に可能である。すべての脱炭素化シナリオが排出量削減目標を可能にするとともに、長期的には既存政策よりもコストを抑えることにつながる」と強調。同委員会は「早期投資が低コスト」につながると、各国政府、またビジネス界に呼びかけた。

そのために、EU全体でエネルギー効率の向上と自然エネルギーの割合の引き上げに取り組むとした。そして、天然ガス、石油、石炭、原子力の各エネルギーのシミュレーションを提示。さらに各エネルギーでの域内統一市場の形成を2014年までに行う目標も掲げた。

また国境を越えたエネルギー供給網の連結、スマートグリッドの普及、インフラの整備と柔軟性向上を目指すとした。

■会議乱立、先行き混沌の日本

EUは27カ国の連合体。その政治手法として、大きな目標を掲げ、それに各国が協調を目指す方式を重ねる。その動きは特に環境問題で著しい。この手法にその動きについては賛否両論があり、EU各国のメディアの報道を見れば、このロードマップにも賛否両論がある。しかしビジョンを掲げて求心力を作るやり方で、環境問題を解決しようとする枠組みが世界に先んじて作られてきたことは事実だ。

一方で東日本大震災と福島の東電第一原発事故との苦難に直面した日本。内閣府の「エネルギー・環境会議」で「エネルギー政策の見直しを12年夏までに行う」と、野田佳彦首相は明言。

しかし首相直属の「電力改革及び東電改革に関する閣僚会合」、原子力安全委員会の特別部会、経産省の「総合資源エネルギー調査会」「電力システム改革に関するタスクフォース」など、政策検討の会議が乱立。さらに調整型の首相の政治手法もあって、エネルギー政策の先行きは逆に不透明さを増している。

震災、原発事故後で今年3月11日に1周年を迎え、国民と世界の関心が再び日本のエネルギー政策に集まる。そのとき、日本はメッセージを発することができるのだろうか。(オルタナ編集部=石井孝明)

欧州連合駐日代表部のプレスリリース

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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