若手が描くコミュニティの未来とは=3月にイベント「Tokyo Community Crossing」開催=

「場づくり」はこれからのリテラシー

―地域でつながることの大切さは再認識されつつあるものの、新たなつながりを誘発する何か仕掛けのようなものが必要だと思う。従来型の会議スタイルの自治会だけでは難しいのではないか。

兼松:何でも話せる安心感を作りだすことは、その場をつくる側の責任として求められると思う。greenz.jpでは、コミュニティデザインと場づくりに関わる講座を行っていて、ワールドカフェやファシリテーションといった具体的なワークショップの手法を学べる場を提供している。主には、趣味や価値観でつながるコミュニティづくりを念頭に置いているが、これは家庭や地域コミュニティでも応用できる。一人ひとりがマイコミュニティをつくるセンスとスキルを身につけることは、これからの時代に求められるリテラシーではないだろうか。

greenz.jp編集長・兼松佳宏さん

荒:僕は大震災以降、町内の自治会(町会)に参加するようになった。大震災前の自治会というのは、何を目的に集まるかというゴール設定が難しい側面があったかと思うが、大震災以降は「防災」という目的が再び表れてきた。僕らの世代も入りやすくなると、もっと活性化すると思う。

兼松:例えば、自治会長一人が頑張るスタイルから、みんなが頑張らなくても機能するようなスタイルにしていく。僕は人生について遊びと学びの繰り返しだと思っている。みんなで学び合えるぐらいの目的から入って、お互いのことを尊敬できるようになる。その上で、防災や地域の将来といった重要なテーマへの解決策を考えていくようになれば良いと思う。

荒:昼間人口と夜間人口の差が大きい地域だと、自治会だけで地域のすべての問題を解決しようとするのは無理がある。価値観でつながった多様な世代がつながることでカバーしていかなればならない時代に入るだろう。

—とはいえ、地域には若者や働き盛り世代があまりにも少ない。一極集中で長時間通勤・勤務を余儀なくされる働き方を続けていると、地域の担い手がいなくなり、結局地域コミュニティが育たないのではないかという危機感がある。

荒:自由に空間と場所を選びながら人とつながりたいというニーズも増えていて、地縁を築くには確かに難しい時代かもしれない。でも、僕らの世代は例えばSNSを通じて、またはNPOで一緒に活動するといった形で、価値観によってつながる感覚を体感している。人は一人では生きていけない。学びと遊びを通じて価値観の近い人たちと地域でもつながることができたら、人生がより豊かになるのではないか。あと、働き方の問題はコミュニティを考える上で大切なので、TCCでは防災に続く今後のテーマの1つにする予定だ。

兼松:僕は最近、「他人だらけのいとこ会」という集まりをやっている。血縁はないけれども友達以上という同年代の友人たちとの「ほぼ家族づきあい」。子どもができたら一緒に遊ばせたいという人たちと、子どもができる前からつながれるのがいいなと思っている。

—私を含めて今の子育て中の親は、地域が薄れていく中で成長した世代なので、子育てと地域でのつながりづくりを同時並行で進める苦労を味わっている人も少なくない。「ほぼ家族づきあい」の人たちと地縁をつくることができれば、すごく安心できると思う。

荒:地域で人々が集まりやすくするためには、もう少し情報伝達に工夫が必要な気がする。回覧板や広報紙に頼っていて、うまく伝わっていないと感じるときがある。

兼松:地域の編集長をつくってみてはどうだろうか。例えば、「こういう写真を投稿する枠があるから何か提供して欲しい」とか、「こういう対談の枠があるからお話を伺いたい」といった形で、地域の人たちが出て来てもらうことを通じて、メディアを使ってコミュニティを作ってみる。あとは、子ども新聞・子ども回覧板、あるいは子どもがお届け物をするなど、子どもを媒介につながってみるとか。

「エコ」は防災につながる

—今回は、防災とともにエコも、コミュニティを考える切り口として提示している。

荒:エコな価値観を持った人たちとつながりたいという思いがある。この人たちと敷地内に家庭菜園を設けて細々とでも栽培していれば、いざ震災などで食料流通が数日途絶えても「自分で作れる!」という自信につながりそうだ。「エコ」や「地域を良くする」という価値観でつながる人たちが、街づくりをリードする主体になれば、地域が変わっていくと思う。

兼松:エコって何も難しいことではなく、暮らしを楽しむことだったりする。そのことに気づくチャンスと可能性はみんな持っているのだと思う。今回の切り口であるエココミュニティがこうしたことを気づかせるきっかけとしての場になれば良い。

当日は荒さんと兼松さんが司会やファシリテーターを務める

―これからどんなコミュニティをつくりたいか。

荒:理想は、プライバシーとコミュニティを自分で選べる環境。地縁だけでは窮屈だけど、プライバシーだけでは孤立していくという両極端な状態をなくしたい。あと、僕自身がおじいちゃん子だったということもあり、多世代が暮らすコミュニティづくりに貢献したいし、自分でもそういった街に住みたいと思っている。

兼松:お互い知らないことを毎日学び合えるようなコミュニティをつくりたいと思う。

―お二人にとっての自治とは。

荒:地域を良くする価値観で繋がること。

兼松:当事者として生きること。

 

【イベント概要】

Tokyo Community Crossing~あなたとつくるこれからの自治~

日程:2012年3月17日(土) 12:30-18:30

場所:JICA地球ひろば(東京都渋谷区広尾4-2-24)

東京メトロ日比谷線広尾駅下車(3番出口)徒歩1分

※駐車場はありませんので、車でのご来場はご遠慮ください。

入場料:1,000円(入場料は、福島出身の若者を中心として福島の復興を目指す「Link with ふくしま」へ全額寄付)

お申し込みは当サイトの「参加申込み」リンク内のフォームからどうぞ。

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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