欧州委員会、上場企業に「女性役員比率4割」の義務付けを検討――下田屋毅の欧州CSR最前線(7)

在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅氏

欧州委員会は3月5日、上場している企業などに一定以上の女性役員割当てを義務づける法案の検討に入ると発表した。

女性役員の比率を2015年までに30%、2020年までには40%にするというもので、5月までに企業や市民から意見を聴取、その後、最終決定する。

女性役員登用義務付けの法制化は、ノルウェーがいち早く取り組みを開始した。経済界の猛反発を押し切って、上場企業の役員の割合の40%(当初7%)を女性にする「女性役員割当制度」を2003年に導入し、わずか5年後に目標を達成した。

その後、ベルギー、フランス、イタリア、オランダ、スペインで企業に対して法整備化を実施、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、オーストリア、スロベニアでは国営企業に対してのみ実施されている。

米国調査会社GMIレーティングスが、世界45カ国の4,300社を対象に昨年の第4四半期時点に実施した調査では、世界の女性役員の比率は10.8%と過去最高の割合だった。

この調査では、ノルウェーは36.3%、フィンランド26.4%、スウェーデン26.4%、アメリカ12.6%、英国は10.7%と先進国の平均11.1%を少し下回る。

新興諸国の平均は7.2%で、南アフリカが17.4%でトップ、中国8.5%、ブラジル4.5%、韓国が最低の1.9%となっている。

日本はわずか1.1%で先進国と新興国を合わせても女性役員の比率は最低レベルであるとの調査結果であった。

世界経済フォーラムでは「The Global Gender Gap Report 」を毎年発行しており、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数について経済、教育、保健及び政治の分野のデータから作成している。

2011年度は、①アイスランド②ノルウェー③フィンランド④スウェーデン⑤アイルランドがトップ5で、英国は16位、米国は17位。日本は135カ国中98位と低位にとどまっている。これは、日本の政治及び経済における男女差が大きいことが要因である。

日本は、法制度的には平等ではあるものの、文化的な背景からか、世界各国の中でも企業内での女性の地位は低いままである。「女性役員割当制度」はジェンダーだけの問題ではなく、女性を役員に登用することのメリットとして、企業に社会交流を促進させることなど良い影響を与えるという調査結果がある。

短期的には、女性役員の役職経験不足や前例がなくノウハウの蓄積がないなどの問題もあるようだが、長期的な視点でもう少し調査が必要ではあるというものの、女性と男性の得手・不得手を確認した上で、女性が活躍しやすい舞台に女性役員を配置することで、より効果的に企業活動を推進することができるようになるということや、その結果を期待して投資を受けやすくなるとの調査結果もある。

EUで「女性役員割当制度」が法制化されるかどうかに関わらず、日本の企業は、女性役員の割合が最低レベルにあることを自覚し、改善していくことを考えていかなければ、世界の潮流から取り残されていくだろう。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

 

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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