ビジネスの根源は海、アミノ酸で海を豊かに――味の素が「環境活性コンクリート」を共同開発

■ 命の循環を蘇らせたい

「環境活性コンクリート」は藻類の生長を促すことで、増えすぎた栄養を藻に消費させ、藻類をエサとする魚や貝を集め、海の食物連鎖の基盤になる。環境活性コンクリートで藻類が活性化すれば、栄養分もヘドロ化せずに利用されて、新たな食物連鎖に使われる。まさに「いのちの循環」を支える仕組みになりえるのだ。

2012年2月末現在で、全国22カ所の海・河川で実証実験が進み、導入実績は13カ所に上る。少なくても3年は効果があることはわかっているが、アミノ酸の効果の持続性を調べるにはさらなる研究が必要だ。

コンクリート製品は形状や価格以外に差別化が難しい。だが、生物多様性の保全が求められるなか、環境性を高められれば付加価値を生み出すことができる。しかも素材そのものに取り組んだのは、「環境活性コンクリートが初めて」(日建工学・西村課長)だ。

環境性の高さは実証されているが、広く普及させるには課題も残る。価格は業界の相場の約1.5倍。ただし、通常のコンクリートと組み合わせることで全体のコスト増は数%に抑えられる。味の素はアルギニンの整法にも研究を重ね、コストダウンへの取り組みを続けている。

■ 震災復興支援にも

日建工学は、東日本大震災で大きな被害を受けた沿岸環境や魚礁の再生に役立てるため、自治体にも積極的に提案していきたいとしている。防波堤の建設などに使えば、環境対応力を組み込んだ防災用の構造物を作ることができる。

粒状など形状や濃度、素材を変えることでアミノ酸の活用法はさらに広がる。味の素によると、今後は海外展開も視野にいれていくという。湾岸環境再生の一助となるか、期待がかかる。(本文敬称略)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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