グローバル時代の働き方考えるシンポ

加速する日本企業の海外進出と並行して、グローバル人材の需要は高まっている。そこで、野村総合研究所(NRI)は9 月12 日、学生を対象にグローバル時代の働き方を考えるイベント「NRI未来創発キャンパス」を都内で開催する。海外を舞台に活躍し、トークセッションに参加する若手社員2人に、グローバルに働く上で必要なことを聞いた。(聞き手・オルタナ編集部=吉田広子、池田真隆)

■ グローバルとは多様性を認め合うこと

仕事の進め方やコミュニケーションスタイルが違う人との違いを楽しめることが大事だと話す河野さん

金融コンサルティング部主任コンサルタントの河野愛さんは、大学時代にフィリピンの大学に留学した経験を持つ。「もともと途上国の貧困問題に関心があった。教室での学びに限らず、自分で現場に行きたいと思い、フィリピンの大学に留学した」と言う。

その後、河野さんは、課題に対して改善案を提案する仕事がしたいと思いNRIに入社。コンサルタントになり、今年で8年目を迎える。入社以来、東南アジアを中心に、10カ国以上訪れた。

例えば、ベトナムでODA(政府開発援助)が有効に使われるように現地の関係者をサポートしたり、日本企業の海外進出などを支援してきた。進出支援にあたっては、進出のタイミングや世界情勢も考慮しながら、進出先の国が持つリスクとポテンシャルを分析、提案していく。

河野さんは、「これまで東南アジアは日本企業から生産拠点としてとらえられていたが、今は新しいマーケットとして認識されるようになった」と話す。

東南アジアへの進出が進む背景には、日本市場の縮小とは対照的に、教育水準や経済水準の高まり、人口増加が起きているためだと分析する。これから企業が生き残るためには、新しい市場を開拓する積極的な姿勢が求められているという。

河野さんは、「グローバル化とは多様性を認め合うこと。相手に自分の常識を押し付けてはいけない」と語る。

物事をきっちりと計画し、的確に進めたがる日本人とは対照的に、細部にはこだわらずに、たとえば約束の時間に対する意識等がルーズな文化もある。河野さんは、グローバルな環境で働くには、英語などの基礎的なスキルだけでなく、仕事の進め方やコミュニケーションスタイルが違う人との違いを楽しめることが大事だという。

将来、グローバルに働きたいと考えている学生には、「学生は時間の使い方を主体的に決められる。今のうちに、海外に行ってみるのも良いし、関心のあることに時間を使ってほしい。まだ価値観が固まっていない今のうちに色々な価値観に触れることが大切。当日のトークセッションでは、私にできるアドバイスは何でもします」と話す。

■ 海外でビジネスを作る覚悟があるか

海外で働くと日本の代表として周りから見られるので、責任を感じるようになると話す安増さん

2004年に入社した安増拓見さんは、大手小売業、通信業向けのシステム開発にかかわる主任システムエンジニアだ。安増さんは、「日々、膨大な量の情報が入ってくる社会を生きる若者には、様々な価値観が身に付いているはず。多様性を受け止めやすいのではないかと見ている」と話す。

「若いうちから海外に行って、様々な価値観を持った人たちの中に入り、そのような環境で日本人らしさを発揮してほしい」と期待する。

安増さんは、コンビニの海外現地法人向けシステム開発を担当した際、日本企業が海外に展開するために、現地の法律やニーズに合わせたシステムを開発した経験を持つ。

また、社内で有志を募り、2011年から海外での新事業を考える勉強会もたちあげている。将来はインドネシアでのビジネス展開を目指しているという。

「今は情報の垣根がない時代。物理的にも距離が近くなった。また、国際的な経済力の優劣も大きく変わろうとしている。これからは世界を視野に入れてビジネス展開をしていかなければならない」とする。

この10年でNRIも海外のシステム案件を多く手掛けるようになり、グローバル化が進む。安増さんの働く流通系の本部で海外案件に関わるエンジニアは、全体の8分の1にあたる50人ほどに増え、NRIの海外拠点も今年度中に20拠点になる。

安増さんは、「海外で働くと日本の代表として周りから見られるので、責任を感じるが、その分成長を実感できる」と話す。

「刺激的な環境に身を置くことで、成長してほしい。海外に一人で行ってビジネスを立ち上げる覚悟があるのか自問してみてほしい。グローバルで活躍するにはそれくらいの気概が必要だ」と話す。

NRI未来創発キャンパスは9月12日、丸ビルホールで開催される。当日は、ユーストリームでの配信も行われる。河野愛氏、安増拓見氏が登壇するトークセッションには、当日基調講演を行うNRI香港社長の澤井啓義氏、コンサルティング事業本部グローバル事業企画室長小野尚氏も参加する。来場する学生との双方向な対話の場として、グローバルに働くとは何かを議論する。

未来創発キャンパス

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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