希代 準郎
作家
日常に潜む闇と、そこに開ける不安と共感の異境の世界を独自の文体で表現しているショートショートの新たな 担い手。この短編小説の連載では特にNPOという新たな動きに注目、そこに関わる群像を通して、生きる意味、生と死を考える。

2018/09/29

「ホップ・ステップ・ジャンプ」で正社員に

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(22)  私はユッコ。児童養護施設から小学校に通っている。フィリピン生まれなんだけど、母が出稼ぎに来ていて日本人のおじさんと結婚したの。それで離婚した前夫の子どもである私も […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/09/13

ボクが犬語をしゃべっていた頃:こころざしの譜(21)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(21) あのころのことを考えると本当に嘘みたいだ。ボクにあんな特別な才能が備わっていたなんて。 あれは、そう、大学に入ってすぐ、オリエンテーション・キャンプで丹沢のちょっと […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/08/03

便利屋「萬」の1週間:こころざしの譜(20)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(20)  長く勤めた精密機械メーカーを定年まで1年を残して辞めた。少し我慢する手もないではなかったが、社長の傲慢さが腹に据えかねた。心臓が悪いといううわさもあるが、憎まれっ […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/07/10

津波で流された「幸福食堂」を 君は覚えているか :こころざしの譜(19)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(19)  永年勤めた新聞社を私はきょう定年退職する。事件や事故を扱う社会部が長かっただけに仕事には恵まれた。短気な性格で上司ともよくぶつかった。辞めようと思ったことも一度や […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/06/07

キムチ売りは「おばちゃん宣教師」 :こころざしの譜(18)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(18) 玄児美(ヒョン・アミ)は駅前の通りを落ち着きなく行ったり来たりしていた。誰もが背を丸め家路を急いでいる。3日前、小学1年生になる娘の春琴(チュングム)が行方不明にな […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/04/25

小児病棟のピエロ こころざしの譜(17)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(17)  田植えが終わり居間でのんびりしていた雅代のところに娘の玲子から突然電話が入ったのはほんの一週間前のことだった。 「お母さん、勇介が・・・」と叫んだきり、後が続かな […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/04/04

「若年性認知症」の里 こころざしの譜(16)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(16) 「あなた、早くして。もう皆さんが飛行場に着くころだわ」  妻の綾子が隆を自宅の居間から追いたてる。 「わかっている。そうあわてるなよ」  役場に顔を出すと、町長が「 […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/03/05

「病囚の島」からの遺言 こころざしの譜(15)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(15)  瀬戸内海にこんな島があることは誰も知らないだろう。忘れられたような閉じた島。春は島影がおぼろに揺れ、夏には光の束がきらきらと海の面で踊る。秋ともなるとの夕焼けを背 […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/02/13

象たちの「造反有理」こころざしの譜(14)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(14)  朝早くから、工場横には夏の光を浴びて長い列ができていた。大人もいるが、目をクリっとさせた登校前の元気な子どもたちの姿が目立つ。みんな背負った籠から何かを取り出し、 […]...続きを読む »

alterna columnist

2018/01/04

「ハンセン病、忘れえぬ悲話」こころざしの譜(13)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(13) 底冷えのする暗い夜だった。周りの山には骨ばったカラスの脚のような小枝が広がっている。嫌なことが起きなければいいが、と不吉な予感を抱えながら八重は食器を洗っていた。こ […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/12/12

大金を寄付する女―「ショート・ショート」(掌小説)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(12)  船越は定年後、ひょんな縁から国際協力NGOで働いている。のんびり余生を送るつもりだったが、そんな甘い夢は妻の芳江に一蹴されてしまった。「ローンは残っているし、下の […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/11/01

NGO、「偽善者」の善――「ショート・ショート」(掌小説)

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(11)  あれっ、これは一体・・・。霞が関の役所に提出する急ぎの報告書をチェックしていた私は、あるページで思わず手を止めた。インターン先のNGOは南米ペルーのリマ郊外にある […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/10/11

明日の聴導犬

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(10)  大学受験に失敗したあの日からだった、明澄が部屋から出なくなり灰色の世界に籠ったのは。太陽が昇るちょっと前、家から抜け出す。近くのパン屋が焼けたばかりの温かいコッペ […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/08/28

もうひとつの「英雄の死」

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(9)  あれは2020年8月、アフリカ特有の熱風が吹く夏の日だった。内戦が終結したP国でひとりの若い日本人が射殺体で見つかった。現地で国連PKOに参加していたNGOの職員、 […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/08/04

泥んこシルクロード:希代準郎「ショート・ショート」

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(8) 遠くうっすらと稜線を残して山々が連なる。それを背に草原を駆け抜ける馬の群れ。草はまばらで土煙があがる。ド、ド、ドと地響きを立てて疾走している数は二十頭を超える。一人取 […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/07/04

ホームレスに恋をして

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(7)  華やかなネオンの谷間に沈んだようにして灰色のドヤ街はあった。女子大生の私は大学院に進み、ホームレス支援の活動を続けながら貧困をテーマに修士論文を書こうとしていた。ド […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/06/28

「蝶の舞い」とドラムスティック

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(6)  日が落ち、闇がさびれた工場に溶け始めた郊外の街は静まり返っていた。時折、パトカーが通り過ぎ遠くで犬の吠える声がするくらいで人通りはない。古いビルの角を曲がり三階まで […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/04/27

中国人難民を助けた男、NGOのパイオニア

「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(5)  原発事故で新しい街に引っ越した。私がその一風変わった男を見かけたのは、ハローワーク通いが休みで、自宅近くの商店街をぶらぶら歩いていた冬のある日のことだった。何やら人 […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/04/11

モリンガをアフリカの女たちが植える日

モリンガをアフリカの女たちが植える日――「ショート・ショート」(掌小説)こころざしの譜(4) まもなく着陸するという雑音交じりの機内アナウンスに日菜は窓の外に目をやった。一面に茶褐色の乾いた大地が広がり、ところどころ、枯 […]...続きを読む »

alterna columnist

2017/02/07

私?難民ですけど――「ショート・ショート」(3)

私?難民ですけど――「ショート・ショート」こころざしの譜(3) 早いものでもう6年になる。 悪魔の舌が模型のような街をなめていく映像にトゥレイン・ヘイン・テインは息を飲んだ。東京・高田馬場に開いた掘っ立て小屋のようなミャ […]...続きを読む »

alterna columnist

Page 1 of 212
alternaショップ
ページの先頭に戻る↑