志を求める若者たち(8)
元・当事者がニートの自立を支援

無業者の自立を支援するジョブカフェや若者自立塾は成果を上げていない。誰もがしたがらない仕事や雇用されることばかり無理強いされるからだ。そこで個々のスキルと自主性を重視して仕事を創る当事者団体が誕生した。(聞き手・今一生 協力:西田英夫)

シゴトノアトリエ(任意団体)

遠藤一(29歳)
シゴトノアトリエ代表理事。「レンタル空手家」事業部長。元ひきこもり。フリーライター。
魚田惇(25歳)
シゴトノアトリエの「コンピューターおにいちゃん」事業部長。元ニート。現フリーター。

本誌オルタナ14号 P46からの続き

――遠藤さんがひきこもりだったなんて、今では信じられないくらい明るいですよね。

遠藤 ははは(笑)。でも、マジっす。ネットでも公表しています。当時のことはこちらのブログに掲載しています。 今読むと、当時の俺はかなりイタイです。でも、そういう時期があったからこそ、今があるように思うんですよ。だから、シゴトノアトリエの公式サイトを作った後に、代表理事として何を考えているのかが今ひきこもってる人に伝わるように、前から書いていた「元ヒキだからできること」というブログに加えて「シゴトノアトリエ・ニーティングブログ」というブログも新たに書き始めたんです。まぁ、今でもへたれなことを毎晩のように書いてますが。

魚田 「わたし元ヒキだけど山に登りたい」というブログも新たに書き始めました。 僕は昔から、自己啓発書を読むのが好きだったので、ニートになってヒマだった時、それをブログにしてみました。他に、ゲストハウス暮らしの楽しさを伝えたいなあと、ゲストハウスブロも書いています。そうしたブログを書いたり、他のニートたちのラジオやチャットに遊びにいったりしているうちに、遠藤さんと知り合って、コンピューターおにいちゃんの事業を始めることができたんですよ。

――なんでも経験してみるもんですね。人生、どこで良い出会いがあるか、わからないし。

遠藤 魚田くんは「有意のニート」というハンドルネームで、そのネーミングがちょっと良い感じだったので、今年の「皇居マラソン」に誘いました。 走り終わった後にファミレスでゆっくり話していたら、「コンピューターおにいちゃん事業」のアイデアが出て、勢いで始めました。

魚田 それから遠藤さんと一緒に広報チラシを作って駅前で配布したり、専用サイトを作ったりしていたら、本当に問い合わせがあってお客さんができたという(笑)。その方は今でもリピーターになってくれているので、パソコンを教える日時を電話で毎回連絡し合って決めています。

遠藤 「有意」は、ゲストハウスの部屋にあるパソコンで自作した名刺を配っています。「シゴトノアトリエ コンピューターおにいちゃん 事業部長」って印刷してあります。

魚田 シゴトノアトリエの場合、新しい事業部を作った人は誰でもいきなり「事業部長」ですからね(笑)。でも、この事業では高齢者などのパソコン弱者にパソコンを教えることで、パソコン弱者の救済と若者の雇用創出の両方を一度に解決する一石二鳥の支援事業なんです。

遠藤 「有意」は、その事業の専用ブログも始めたんです。仕事の状況がわかるので、面白い。

――とにかく2人だけでここまでやってきたのもすごいですし、僕のような40代のおじさんから見ると、ブログやホームページをサクッと自作してしまうスキルがふつうにあるだけで、すごいなと思います。

遠藤 10―30代なら簡単にできる人は結構いると思います。でも、そういうことをジョブカフェや若者自立塾の人たちは全然知らない。知っていたら、そういうところのスタッフは、目の前のニートにお金を出して作ってもらうのが良いと思うのですが。たぶん、考えもつかないだろうし、お金を持っていても仕事を作ってくれません。ニートやひきこもりをひとまとめにしているので、特定の人には何も出来ないだろうと思います。 でも、本当はすべての人が「特定の人」なんですよ。だから、一律に支援するなんて、成果が上がるはずがないんです。僕たちは一人ずつ確実に成果を出しますよ。遠く関西から皇居マラソンに参加したことで、ひきこもりから脱出して就職できた女性もいましたし、簿記3級を受験中で僕らの団体の経理をしたいと言ってくれている人もいます。僕らはあくまでも当事者個人のニーズに合わせた支援を行いながら、それぞれが自分らしく楽しくみんなで稼げる仕組みを作っていきたいんです。

――お二人の笑顔が気に入ったので、「シゴトノアトリエ」のmixiコミュを作って応援させていただきます。

遠藤 ありがとうございます。僕たちは、山本繁さんが「ニート支援」と公言して活動し始めた「NPOコトバノアトリエ」に期待していたし、尊敬もしていたので、団体名をもじってみました。ただ最近は「若者支援」の方に方針が変わってきたような印象です。 僕らは「当事者の経験を持つ自分たちでニート支援をやるしかない」と思っています。もしかしたら山本さんはそういうリアクションが起こるのを期待してニート支援から戦略的に方針を変えたのかもしれませんが、いずれにせよ、僕たちによって当事者ニーズに近いソーシャル・アクションを始めるきっかけになりました。

――遠藤さんはコトバノアトリエがやっているネットラジオ「オールニートニッポン」に出演したり、サイトに連載したりするなど、かなり山本さんの活動にボランティアで参加してきましたから、そこから学びとるものがあったのでしょうね。スガシカオさんの歌「コノユビトマレ」のYoutube動画へのリンクを、キックオフ・ミーティングへスタッフ志願者を誘う文章の最後に貼って、自分たちの気持ちを端的に伝えるツールにしているのは見事でした。したたかですね。

遠藤 これまでメディアへの売り込みもガツガツやってきましたからね。毎日新聞読売新聞、新日本海新聞コラム、サンデー毎日、産経デジタルの「ランナーズ・クローズアップ」、月刊ランナーズ 、FMヨコハマTOKYO MXTVなど、もう数えるだけで疲れちゃうほどいっぱい紹介されてきたのに、マイナーなんです(笑)。

――これからもがんばってください!

 

(2009年06月16日掲載)

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