CDP幹部「スコープ3算定は不完全でもいい」と言い切る理由

記事のポイント


  1. ネットゼロを目指すには供給網(スコープ3)も含めた脱炭素化が欠かせない
  2. だが、供給網の算定は正確なデータを入手できず、課題が山積みだ
  3. 国際NGO CDPの幹部は、「供給網の算定は不完全でもいい」と言い切る 

「気候変動」や「森林」「水」などの分野で企業を格付けする国際NGO CDPのデクスター・ガルビンCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)がこのほど来日し、オルタナ編集部の取材に応じた。ガルビンCCOは、環境の専門家が集まるCDPの中で最も「スコープ3」を知る人物だ。供給網全体で脱炭素化を目指すには、3つのポイントがあると語った。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)

スコープ3を熟知し、企業のサプライチェーン全体での脱炭素化を支援するデクスター・ガルビンCCO

――社会全体で「ネットゼロ」を目指すには、スコープ3も含めたサプライチェーン全体で温室効果ガスの排出量を減らしていくことが重要です。企業がスコープ3の排出量を減らすためのポイントは何ですか。

ポイントは3つあります。一つ目のポイントは、スコープ3算定では、完璧なデータに執着しないことです。不完全でも問題ありません。重要なことは、始めることです。まずは、サプライヤ―が排出量の開示と報告を行うために、何ができるのか考えて下さい。

CDPが提供する「サプライチェーン・プログラム」を導入した企業を見ていくと、サプライヤーの排出量は最初の2~3年で増える傾向があります。しかし、それは、スコープ3の全15カテゴリーを開示しているからであり、サプライヤーの開示能力が上がっているということなのです。

これは、非常に重要なことです。そのため、スコープ3の算定・開示に取り組みだした初年度のデータの品質については心配する必要がありません。本当に重要なのは、サプライヤーが報告していることを確認することです。

二つ目のポイントは、注力するターゲットを絞ることです。サプライチェーン内で最も重要なサプライヤーを特定するのに役立つ二次データ(推計値)が市場に出回っています。二次データを活用して、サプライチェーンの大まかな分析を行い、最も多く二酸化炭素を排出するカテゴリーと取引先を特定するのです。

その取引先との取引内容を見直し、定期的にコミュニケーションを図り、何を求めているのか伝えて、脱炭素に取り組むことの重要性を理解してもらいます。

そうすると、サプライヤーと協力して排出量を削減する機会を得ることができます。サプライチェーン上のコスト削減につながるかもしれません。脱炭素化の方針をいち早く伝えることで、サプライヤーと協業の可能性も生まれます。

「スコープ3上流」の平均排出量は自社排出量の11.4倍
調達担当者も巻き込みサプライヤーエンゲージメントを
サプライチェーン上での取り組み、消費者に伝えて
「何も取り組まない企業こそよく話す」

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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