記事のポイント
- リコーグループは就労に困難を抱える若者の就労支援に取り組む
- その背景には、情報格差(デジタルデバイド)の課題がある
- 最新のデジタル技術の使い方を教え、若者の社会参画を後押しする
リコーグループは就労に困難を抱える若者の就労支援に取り組む。近年、デジタル化が進み、多くの企業がパソコンなどを扱う「デジタルスキル」を求めるようになった。一方で経済的に貧しい家庭ほどパソコンの利用率は低い。そこで同社はメタバースなど最新のデジタル技術の使い方を教える講座を開き、若者の社会参画を後押しする。(オルタナS編集長=池田 真隆)

リコーグループは、若者の就労支援を行う認定特定非営利活動法人育て上げネット(東京都立川市)と組んで、「若者向けデジタル支援プログラム」に取り組む。2021年から始め、今年で3年目だ。国内だけでなく、英国やベトナムのリコー関連会社でも同様の取り組みを展開する。
同プログラムでは、同社の社員がメタバースなどのデジタル技術を活用した「スキルトレーニング」を提供する。
国内プログラムでは、これまでの2年間で計82人の若者を支援した。昨年は40人の若者を支援し、参加者の73%がプログラム終了後、半年以内に就労や専門学校に入学するなど成果を上げた。
このプログラムに参加する社員はプロボノとして関わる。昨年は、国内プログラムに62人のリコーグループ社員が参加した。社員にとっても、若者が感じる働きづらさを理解し、働きやすい職場環境やダイバーシティ&インクルージョンを考える機会になっている。
■世帯年収200万円未満のインターネット利用率は54.2%
なぜ同社は、若者の就労支援に取り組むのか。それは、同社が掲げる「使命」に関係がある。リコーグループは、使命として、『はたらくに歓びを』を掲げる。人間らしい創造性のある仕事に注力できるような会社を目指す。
リコーのESG戦略部ESGセンター事業推進室CSVグループに所属する岡野麻衣子氏は対象者を若者とした理由についてこう話した。
「近年のデジタル社会の進展により、グローバルでデジタルスキルの向上が課題になっており、日本でもそのニーズがある。多くの若者はスマホを使っているが、パソコンの利用率に関してはかなり差があり、キーボードを使って資料を作ったことがない若者も多い」
デジタル化が進む一方で、パソコンやスマートフォン、インターネットにアクセスできない人とできる人の情報格差(デジタルデバイド)は広がる。
インターネット利用率を世帯年収別で見るとその格差が分かる。400万円以上の世帯の利用率は80%(2017年、総務省調べ)を超えるが、200~400万円では74.1%と下がる。200万円未満では54.2%とさらに下がる。
岡野氏は、「デジタル化の進展が就労へのハードルを上げる要因の一つになっていると認識しており、デジタルスキルをテーマにした若者の就労支援に取り組むことにした」と話す。
3回目となる今年度は、10月と2月に実施する。特に地域での展開を強化する。NPO、企業、行政と連携し、東京や大阪、名古屋などで若者の多様な働き方の実現を後押しする。