助産師ユーチューバーが挑戦する「産後ケア銭湯」

記事のポイント


  1. 「産後うつ」など、産後のメンタルの問題が認知されるようになってきた
  2. 安価で日帰りで利用できる「産後ケア銭湯」という取り組みが始まった
  3. 立ち上げたのは、助産師で性教育ユーチューバーの大貫詩織さんだ

出産・産後の育児で疲弊していると、産後うつなどメンタルの問題を招きやすく、休息などの予防が大切だ。そんな乳幼児期の子育てを行う親たちが、気軽に心身を回復させるサービスとして、安価で日帰りで利用できる「産後ケア銭湯」という取り組みが始まった。(ライター・遠藤一)

大貫さんも一時は産後うつ寸前になったと言う((「性教育YouTuber」シオリーヌから)
大貫さんも一時は産後うつ寸前になったと言う(「性教育YouTuber」シオリーヌから)

「産後ケア銭湯」は、温浴・スーパー銭湯などの施設に助産師・看護職が出張し、託児と育児相談を日帰りで利用できるサービスだ。現在は、神奈川県藤沢市の温浴施設で第4月曜日に毎月行っている。

このサービスを始めたのは、助産師で性教育ユーチューバーとして活動するシオリーヌこと大貫詩織さんだ。昨夏に出産を経験してからは、育児中のリアルな問題を明るいトーンで紹介・情報提供する動画を多く出している。

大貫さんは助産師という仕事柄、出産や育児については知識としては知っていたはずが、実際の育児をしてみて「大人が二人いてもギリギリだ」と痛感したと言う。パートナーと共同の育児を行っていたが「睡眠時間も十分に取れない状況で夫婦ゲンカをする余裕すらない」と言う。

ある時、民間の宿泊型産後ケアを利用することがあった。大貫さんは「赤ちゃんも預けて、ぐっすり寝かせてもらって、その後に再会した『赤ちゃんチビリーヌ』がびっくりするほど可愛かった」と語る。

産後ケアを利用することで、心の余裕の大切さを知ったと言う大貫さんだったが、実際の産後ケアを利用することで、課題も見えてきた。

「(民間の)宿泊型産後ケア施設は、一泊6,7万円が相場。自治体が行っている産後ケア事業もあるが、利用するために登録などが必要で、利用者が制限されることもある。どちらも気軽な利用はしにくい」(大貫さん)

調べると、確かに民間の宿泊型は6万円以上が中心と高額だ。自治体の事業は、1泊1万円程度だが「心身の不調や育児不安があり、支援が必要な方」(東京・板橋区の例)など条件があり、敷居が高いことが想像される。

そこで大貫さんは同年10月「産後ケアをすべての人が手の届く選択肢にしたい」とRineを設立した。手ごろな価格で、日帰りで気軽に利用できる「産後ケア銭湯」事業を開始した。

赤ちゃんを預かるスペース( 「性教育YouTuber」シオリーヌから)
赤ちゃんを預かるスペース( 「性教育YouTuber」シオリーヌから)

なぜ、「銭湯」なのだろうか。

大貫さんは、自身も元々好きだったことに加えて「温浴施設は、ゆっくりお風呂にも入れ、ご飯も食べられる。横になって休めて、マッサージを受けられる。まさに産後にゆっくりと一人でできないことが凝縮されている」と、身近なセルフケアの場所として理想的だったと言う。

当初は縁のあった「湘南台温泉らく」で、単発イベントとして始まったが、今年6月からは月イチでも行うようになった。予約は全てオンラインで行え、定員は1イベントにつき、6人。スタッフも、赤ちゃん一人につき1人につく体制だ。温浴施設のスペースに、赤ちゃんのお預かりコーナーを設置している。

直接授乳の場合は、授乳時間に合わせ来てもらうが、ミルク授乳にも対応している。おむつ交換やあやし、寝かしつけなども行う。助産師や看護職がスタッフとしていることから、子育て全般の相談にも乗っていると言う。

10時~16時の間で行い、利用料は7980円だ。利用者は「スタッフの方もたくさんいて、泣いても必ず抱っこしてくれる姿が見られて安心できた」と喜ぶ。常連さんも多く、4回目だという利用者は「どんどん自分が回復していくのがわかる」と笑顔だ。

今後は、回数を増やすために、協力してくれる温浴施設も増やしたい考えだ。銭湯だけでなく、カプセルホテルなども、会場候補とする。

安定して運営し、システムを構築していくため、11月末までのクラウドファウンディングに挑戦している。11月25日現在、300万円の達成額に、あと70万円ほどとなっている。 

「こんな産後ケアの提供の仕方があると、一つのモデルを実現したい。日本全国の助産師さんやお母さんたちをサポートしたいと思っている人が、真似してくれるようになったらすごくいいな。子育てを頑張っている親御さんたちの選択肢を増やすことに貢献したい」(大貫さん)

◆【産後ケア銭湯】気軽に使える産後ケアの選択肢を増やしたい!(クラウドファンディング)

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