記事のポイント
- JTBはコロナ禍を機に、ダイバーシティ施策を一気に加速させた
- 心理的安全性を指すBを加えた、「DEIB」を掲げ、サービスの質を上げる
- 同社の高崎邦子・執行役員DEIB推進担当にその戦略を聞いた
コロナ禍を機に、社内のダイバーシティ施策を一気に加速させたJTBは、2023年4月に更なる推進を目指し、「DEIB」(Diversity・Equity・Inclusion・Belonging)を掲げた。心理的安全性を指すBを加え、DEIBでサービスの質を上げる。担当役員にその戦略を聞いた。(聞き手・池田 真隆=オルタナS編集長、萩原哲郎=オルタナ編集部)

――2023年4月から「DEIB」を掲げ、社内で推進されています。DEIBを掲げた背景と狙いは何ですか。
JTBグループは、2007年からダイバーシティ推進に取り組んでいます。当初より、「女性活躍」だけではなく、「多様化の推進」や「企業風土・社員の意識改革」、「働きやすさの追求」などに取り組んで来ました。
2018年の経営統合の際に、ダイバーシティを担当する役員が任命され、「カルチャー改革」を前面に押し出して、「OPEN・CHALLENGE・FUN」を「毎日のアクションポリシー」として、ダイバーシティの理解・浸透・自分ごと化を進めて来ました。
2020年度にはコロナ禍の影響で過去最大の最終赤字(1051億円)を計上することとなり、グループ全体で約7千人の人員削減を実施するなど、今後の生き残りを掛けた構造改革に踏み切りました。
その改革で示した経営方針の中に、ダイバーシティを重要施策の一つに組み込みました。短期的な視点ではなく、今後サステナブルな企業になるためには、中長期的な視点でとらえることが重要だと考えたからです。
2023年4月に、これまで進めてきたダイバーシティ&インクルージョンの考え方に含まれていた「E(Equity:公平性)」と「B(Belonging:帰属性)」の観点を外に出し、改めて「DEIB」として掲げました。社員一人ひとりが一層安心して活躍できる風土にしていくためです。
DEIBのBは「帰属性」と訳されますが、私は「心理的安全性」と表現しています。「心理的安全性」は、DEIを担保する最も重要な役割を果たすと考えてるからです。
JTBには約2万人の社員がおります。そのためDEIBを社内に浸透させるには、相当な時間とコミュニケーションの機会をつくる必要があります。その中で何より重要だと考えるのは、会社がどこに向かって走るのかを宣言し、社員とベクトルを合わせていくことだと思っています。
また、DEIBにしっかりと取り組んでいくことを社内外に表明することも、推進の後押しになります。
■人材の活かし方、経営の最重要課題に
■多彩な制度で社員の「自律性」を促す
■女性管理職比率、2024年に「4割」へ