「社外取締役がガバナンス改革のカギ」榊原・元経団連会長

記事のポイント


  1. 経済産業省や経団連は、「ガバナンス・サミット2023」を開催した
  2. 榊原定征・元経団連会長は「社外取締役がガバナンス改革のカギ」と発言した
  3. パネルディスカッションでは、イノベーションと人財の関係性で議論が進んだ

経済産業省や経団連はこのほど、4回目となる「ガバナンス・サミット2023」を開いた。榊原定征・元経団連会長が「社外取締役がガバナンス改革のカギ」と発言したほか、「イノベーティブな戦略構築を支えるコーポレートガバナンスの在り方」を論じ合った。(オルタナ総研フェロー・室井孝之)

榊原定征ガバナンス・サミット実行委員長(経団連名誉会長)

ガバナンス・サミット2023は、国際情勢や経営環境が激変する中で、経営者がリスクに挑戦し、従来の事業活動の枠組みを超えた戦略の再構築を支える基盤がコーポレートガバナンスにほかならないとの認識のもと、経営者、行政等の専門家が、日本企業が取り組むべきガバナンス改革の方向性について議論する場だ。

ガバナンス・サミットは2020年に初開催されたが、その背景には「安倍内閣の日本再興戦略(2013)におけるコーポレートガバナンスの強化」「2015年東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード制定」「社外取締役の導入等ガバナンス改革の企業への浸透」がある。

これまでのガバナンス・サミットでは、「取締役会の在り方として、社外取締役を取締役会議長とすること」「企業統治形態は、監督と執行の分離の観点から指名委員会等設置会社が相対的に優れる」等の論議がされた。

ガバナンス・サミット2023での主な論議は次の通りだ。

榊原定征ガバナンス・サミット実行委員長(経団連名誉会長)は、「日本のガバナンス変革は2013年の日本再興戦略が発祥だ。女性や外国人の登用で取締役の多様性も実現しつつある。これからは、社外取締役が、企業の成長戦略に積極的に取り組むことこそガバナンス改革に繋がる」と力を込めた。

また「企業がパーパス、ビジョンを掲げ、自社の成長戦略と社会課題解決とを一体化する」「将来の発展に向け、自社のポートフォリオの最善化に不断に取り組む必要がある」点を強調した。

山下 隆一経済産業省経済産業政策局長は、コーポレートガバナンス改革の更なる進展に向けてとして、「稼ぐ力を強化し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る観点から、自社にとって最適なガバナンス体制構築が肝要」と述べた。

パネルディスカッションには、日本電信電話社、キリンホールディングス社が参加した。テーマ「イノベーションとガバナンス」では、島田 明日本電信電話社長は、「イノベーションは人と人の接点がないと生まれない。実業で利益を生み、それを社会課題の解決に充てることを基本としている」と強調した。

磯崎功典キリンホールディングス社長は、「企業の成長には多様性と専門性が不可欠でイノベーションの源泉は人材」と強調し、プラズマ乳酸菌の発見・商品化が、令和5年度全国発明表彰で健康食品素材として初、食品企業では59年ぶり(前回は昭和39年「微生物による5´-ヌクレオチド類製造法」)となる「恩賜発明賞」を受賞したことを紹介した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG

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