災害支援の「もれ・むら」をどう防ぐか、調整機能がカギに

記事のポイント


  1. NPOのJVOADは、「災害時の連携を考える全国フォーラム」を開催した
  2. 災害支援担当者600人が参加し、大規模災害時での「連携・協働」を論議した
  3. 支援の調整力こそが「もれ・むら」を防ぐ

特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD:ジェイボアード)はこのほど、第7回「災害時の連携を考える全国フォーラム」を都内で開催した。「災害支援の文化を創造する」のテーマで、全国から災害支援担当者600人が参加。大災害時に行政やNPO、社会福祉協議会などが、どう連携・協働し、支援の「もれ・むら」を起こさないかを話し合い、調整機能が鍵であることを共有した。(オルタナ総研フェロー・室井孝之)

栗田暢之JVOAD代表理事

「災害支援は、多種多様な課題を解決するという共通な目標に向け、行政(国・都道府県・市町村)、NPO(災害中間支援組織)、社会福祉協議会(災害ボランティアなど)の三者連携が不可欠だ。南海トラフ巨大地震を見据えたつながりを作る場としたい」

栗田暢之・JVOAD代表理事は、こう開催趣旨を語った。

フォーラムは、オープニングセッション「南海トラフ巨大地震、支援の『想定外』は無くせるか?」と18分科会(「官民連携のための官の体制づくり」「内水氾濫における物保全の技術的対応」「いざという時どうする?あなたの食と栄養~官民連携の好事例」など)で行われた。

福和伸夫・中央防災会議防災対策実行会議南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ主査が指摘した「南海トラフ巨大地震対策の課題」は次の通りだ。

・津波避難ビルはできたが高台移転は?
・政施設は進んだが民間、住宅の耐震化は?
・一度の地震で命を守る耐震基準でよいのか?
・少子高齢化の中、支援・受援のバランスはとれるか?
・老朽化し相互依存するライフラインは大丈夫か?
・超広域災害で広域連携は頼れるのか?
・デジタルは有用だが、本番で確実に使えるか?
・医療・福祉は継続できるか?災害関連死は?
・金融・保険、製造業とサプライチェーン、食料と物流、大丈夫なのか?
・リソースが不足する中でのトリアージはできるか?

明城徹也・JVOAD事務局長は、被災者支援コーディネーションの機能として、「連携の促進」「全体像の把握」「活動を支援」「課題を解決」と説明した。

「コーディネーションが機能することにより、支援の『もれ・むら』が起きず、被災者が尊厳のある生活ができ、さらには将来的に災害に強い地域に貢献することを目指す」と強調した。

JVOADは、全国社会福祉協議会、中央共同募金会、日本赤十字社など正会員37企業・団体、旭化成ホームズ、味の素ファンデーション、MS&ADインシュアランスフループ、セコム、花王、キヤノン、LINEヤフ―、新菱冷熱工業、損害保険ジャパンなど賛助企業・団体38組織が属している。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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