雑誌オルタナ75号(2023年12月20日発行)の「モビリティトピックス」を紹介します。
■クルマを自由な表現の「場」に
ソニー・ホンダ モビリティ(SHM)がBEV「AFEELAプロトタイプ」を、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」で日本初公開した。
同社では、開発環境のオープン化によってクルマを社外のクリエイターやディベロッパーらの自由な表現の場にしたいという。開発できるのは車内外の高精細スクリーン、走行音、マップ上の付加情報などとなる。
他社も同種のオープンソース化を進める中、AFEELAのセールスポイントはきわめて高性能で、多彩な表現を可能にするハード性能だと川西泉社長兼COOは言う。例として出されたのはデジタルガジェットや何と自作PC。さて開発者達にはどう響いただろうか。
■トヨタと出光、全固体電池量産へ
トヨタ自動車と出光興産は全固体電池の量産化へ向けた協業を開始する。BEVのゲームチェンジャーと言われる全固体電池だが、充放電による膨張や収縮を繰り返すうち正極、負極と固体電解質の間に亀裂が入るという耐久性問題の克服が最大の課題とされている。
石油製品の製造過程で発生する硫黄成分を原料とする硫化物系固体電解質の開発、製造について出光が蓄積してきた技術と、トヨタの材料開発、電池加工・組み立て技術。その融合により、割れにくい固体電解質を使った全固体電池の開発、量産化が現実的な視野に入ってきた。
目指すは2027年から2028年の実用化。日本の産業の国際競争力向上にも大きな意味を持つタッグの結成だ。
■FC大型トラック、27年に導入か
いすゞ自動車とホンダは、2020年1月から燃料電池(FC)大型トラックの共同研究を進めている。大型トラックのカーボンニュートラル化には、CO2排出量ゼロであることはもちろん、長距離走行に対応し、燃料充填が短時間で済むFCの活用が有効だという考えに基づくものだ。
発表された「GIGA FUEL CELL」は、いすゞのベース車体にホンダの燃料電池スタックを搭載。56kgの水素を搭載でき、航続距離は800km以上を実現するという。外部給電機能も備え、移動式電源としても活用できる。
FC大型トラックはトヨタと日野もすでに実証運用を始めている。いすゞとホンダでは2027年の市場導入を目指す。
■自由な移動、体重移動で
ジャパン・モビリティ・ショー2023の会場で体験試乗された方も居るかもしれない。ホンダの「UNI-ONE」は、座ったまま前後左右に体重を移動させるだけで移動できるので両手を自由に使えるハンズフリーパーソナルモビリティである。
この「UNI-ONE」が御殿場プレミアム・アウトレットに試験導入された。実に東京ドーム約9個分の敷地を持つ同所内で、巡回警備を行なう施設管理スタッフの移動用である。移動負担の軽減は人材確保にもひと役買うはずだし、来所者とのコミュニケーションの活性化なども期待できる。
まずは2024年3月末まで2台が稼働予定。将来的には一般客の移動などにも活用されるようになればと夢が膨らむ。