オルタナ総研統合報告書レビュー(27):住友ゴム

記事のポイント


  1. 住友ゴムは組織課題解決に向け「組織体質アンケート」を実施
  2. 「挑戦しやすい環境がある」のポジティブ回答率が8割を超えた
  3. 人事担当執行役員は「組織体質改善の取り組みに終わりはない」と述べた

住友ゴムは「挑戦しづらい環境」など組織課題の改善度合いを科学的に検証するため、「組織体質アンケート」を実施し改善に取り組みました。その結果、「挑戦しやすい環境がある」の設問に、ポジティブ回答率が8割を超えるまで改善されました。統合報告書2023の中で人事担当役員は、「組織体質は、環境や人の組み合わせで変化するので組織体質改善の取り組みに終わりはない」と述べています。(オルタナ総研フェロー・室井孝之)

住友ゴム工業 統合報告書2023

住友ゴムは2020年9月から、約20問の「組織体質アンケート」を実施してきました。6段階評価の設問で、4点以上をポジティブな回答と捉え、8割以上の社員が組織体質をポジティブに捉えるという目標を立てました。全部門の調査結果を公表しています。  

「組織体質アンケート」は、同社の組織課題である「挑戦しづらい環境」「コミュニケーションの壁」「古いリーダーシップスタイル」「戦略浸透不足による低い生産性」を定量的に可視化し、改善の度合いを科学的に検証するものです。  

調査結果を踏まえて、各部門からその部門の組織課題に向き合う「タスクフォースアンバサダー」約50人が選出され、組織体質改善に取り組みました。

組織体質改善の結果、「挑戦しやすい環境がある」のポジティブ回答率が8割を超えました。

住友ゴム統合報告書の人事担当役員メッセージで、井川潔執行役員人事総務本部長は、「組織体質改善の重要性」を次の通り述べています。

1.組織体質改善の結果、企業風土として失敗しても叱責したり減点評価したりせず、その挑戦自体を称賛する雰囲気ができてきたと感じている。  

2.ただし、低い生産性の課題はまだ改善の余地があり、組織体質は、環境や人の組み合わせで変化するので、組織体質改善の取り組みに終わりはないと考えている。  

3.組織体質の改善がサステナブルな職場づくり、ひいては質の高い人材の確保、事業の継続につながるため、ビジョンをしっかり伝え現場とベクトルを合わせていけるよう、継続して対話と取り組みを行っていく。  

4.組織体質改善のこれまでの取り組みを踏まえ、CX(コーポレートトランスフォーメーション)プロジェクト推進室を立ち上げた。

5.中期計画の実行に必要なのは「実行力」であり、その実行力を技やスキルとモチベーション、つまり「やる気」の掛け算だと捉え、 CXプロジェクト推進室では、その「やる気」に火を付けることを一番の取り組みテーマにしている。

6.これまでの事業運営モデル、組織運営モデルをガラッと変え、よりイノベーティブな組織への生まれ変わりを狙う。

住友ゴム統合報告書2024では、組織体質改善が産み出した新たな事業運営や組織運営モデルを開示されたらいかがでしょうか。

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #サステナビリティ

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..