人口当たりでは大都市の方が館数は少ない、各図書館の資料費も近年減少が続き、大多数の図書館では平均額を大きく下回っている--などの問題もあります。
こうした予算や職員の削減によって図書館は体力を失いつつあり、新たなニーズへの対応が困難となってきているとのことです。
大阪市でも2012年6月、松井一郎府知事と橋下徹市長が府市統合本部の会合で、大阪府立中之島図書館を廃止することを表明したと報じられ、これも大騒ぎになりました。
中之島図書館は1904年に第15代住友吉左衛門の寄付で作られたもので、蔵書は50万冊。本館と左右両翼の2棟は国の重要文化財に指定されていて、府民にとって大阪の文化を象徴する存在になっています。
最大の背景は自治体の予算不足です。神奈川県の「神奈川臨調」など、各自治体が相次いで設立した行政改革推進委員会は、「切りやすい予算」から切っていく傾向にあります。その中で矢面に立たされる可能性が高いのが図書館なのです。
バブル崩壊後も急速に増え続けた図書館。今後は数だけではなく「質」が問われる時代が来ます。娯楽的なCDやDVDのレンタルまで図書館が面倒を見る必要はないと思いますが、司書の拡充やレファレンスサービス(図書館のコンシェルジェで、本選びを手伝ってくれる)など、本来あるべき機能が育っていないことも懸念されます。
オルタナにも連載している田坂広志さんが「ガバメント2.0」で提唱するとおり、行政サービスのあり方が今後、大きく変わっていくことは必至です。その中で、市民が本当に求める質の高いサービスを、図書館がどう提供できるかが問われています。(オルタナ編集長 森 摂)