「ESGここがおかしい」、ESG対応の法律事務所代表が語る

記事のポイント


  1. 蔵元左近弁護士がESG法務を専門分野の一つとする法律事務所を開業した
  2. ESG分野の案件を本格的に取り扱う法律事務所は珍しい
  3. 企業がESG領域の活動を推進する上で気を付けるポイントを聞いた

旧ジャニーズ事務所の問題で被害者代理人としても活動する蔵元左近弁護士が昨年末、ESG(環境・社会・ガバナンス)法務を専門分野の一つとする法律事務所を開業した。サステナビリティ/ESG分野の案件を本格的に取り扱う法律事務所は珍しい。企業がESG領域の活動を推進する上で気を付けるポイントは何か、蔵元弁護士に聞いた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「ビジネスと人権」に詳しい蔵元弁護士

蔵元弁護士が開業したのは、蔵元国際法律事務所(東京・中央)。企業法務案件(M&A、商取引、コンプライアンス、危機管理、紛争対応、スタートアップ支援など)に加えて、ESG分野の案件を本格的に取り扱う。蔵元弁護士は「ビジネスと人権」などサステナビリティ全般に詳しく、日米で弁護士資格を持つ。

蔵元弁護士はESG領域で企業が気を付けるポイントを3つ指摘した。一つは、「グリーンウォッシュ広告」だ。「脱炭素をうたう広告は増えたが、根拠があるのか、精査が必要と思われる広告が少なからず見受けられる状況だ」と話した。

自主規制団体である日本広告審査機構(JARO)が機能していくのか、景品表示法の担当官庁が今後適切な対応を行っていくのか、注視が必要だという。

「ビジネスと人権」に沿った情報発信は「ほとんど見られない」

二つ目が、「相次ぐ不祥事への対応」だ。「日本企業のガバナンスの改革、特に『取締役会のモニタリング機能の強化』はまだまだ進んでいない」と問題点を挙げた。

「ビジネスと人権」がテーマとなる案件が増えてきたが、「日本企業は未だリスクマネジメントのみの観点で、リスクの排除のみを重視している状況にある」(蔵元弁護士)。

「例えば、ダウンタウンの松本人志氏の案件については、一般論として、契約内容を確認しないと企業が取れる施策は判断できない。事実関係は裁判で審理される予定なので、慎重な判断が必要なのは間違いない。しかしながら、(スポンサー企業などは)『報道を懸念している』というプレスリリースは現段階で出せるのではないか。『ビジネスと人権』に沿った、日本企業の情報発信の例は未だほとんど見られない」

最後に指摘したのは、「グローバルスタンダードと乖離する人権対応」だ。EUと日本で、「人権」への考え方に乖離が目立つと言う。具体的には、「人権と環境・気候変動との関連性への認識が不足している」と指摘した。

「ステークホルダーとの対話を行いつつ取組みを検討するという、国際規範に沿ったプロセスを取る日本企業はまだまだ少ない」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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