ボトムアップで組織を救うには

記事のポイント


  1. サステナ経営には、内部統制されたガバナンスと組織風土が大前提だ
  2. 企業や芸能事務所の不祥事は、肝心のトップダウンに問題がある
  3. 組織内のサステナ意識の醸成が企業風土を構築する役割を担う

21世紀の経営においては、社会の課題解決を明確にした「パーパス経営」によって、競争力を高め、意思決定を迅速にし、組織内のエンゲージメントを向上させて、あらゆるステークホルダーからの支持を得ることが不可欠だ。(サステナ経営ストラテジスト・松田 雅一)

このサステナブルな経営を目指す大前提には、当然にJ-SOXに即した内部統制でしっかりとしたガバナンスを利かせるほか、ハラスメントなど法務・コンプライアンス問題への意識、行動が、組織風土として伴っていなければならない。

昨今の企業、大学、芸能事務所の不祥事事案の多くは、肝心のトップダウンに問題があって組織内のエンゲージメントやステークホルダーとの信頼を大きく損なっているが、再生させる対策方法はあるのだろうか。

社会の課題解決をパーパスとして掲げ、より高い倫理観を醸成する、従業員だけでは無く、役員への法務・コンプライアンス教育研修を強化する、日頃から問題をいち早く把握して、社内にも社外にも公正にディスクローズする。

一般的に考えられる対策方法としては上記のようなことだが、組織風土として定着させるまでの継続性や、トップダウンに問題があってからの懐疑的な取り組みでは、組織内のエンゲージメントを再構築するには相当な時間と労力が予想される。

組織内のエンゲージメントを高めることを考えたとき、その実践の一つとして、オルタナとサステナ経営協会が主催するサステナ経営検定(旧CSR検定)を上手く活用している企業、大学が、多くあるかも知れない。

このテシスをお読みの方は既にお気づきのことだが、サステナ経営検定は受検者個人のサステナブルな社会の実現への意識を高め、同時に合格者の所属する組織を明記し、合格者数で順位付けをして掲載・公表、受検を奨励している。

特に、何百人と合格者の居られる組織では、トップの理解のもとで組織をあげて受検を奨励し、多くの合格者を誇ると同時に、その企業に所属していることにより高いエンゲージメントを感じ、トップ自身が襟を糺すこともあると思う。

過去何十年と続いてきた芸能事務所の人権問題、企業の改ざん・不正、劇団のハラスメントの過去があったとしても、今所属する皆さんがこの検定を受検し合格者を増やすことで、組織を内部から少しでも立て直すことができるのではとも思う。

ボトムアップで組織を救う、サステナ経営検定の取り組みには、トップダウンによるパーパス経営を支え、ボトムアップでオルタナティブな企業風土を構築する役割を担っていると感じている。

組織に所属する人一人ひとりが、組織を救う行動を起こせる取り組みでもある。

筆者紹介: 松田雅一(まつだ・まさかず) 
略歴  静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係
会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を担当。
2020年3月第1回サステナ経営検定1級合格(サステナ経営ストラテジスト)
2022年6月役員退任(専務理事)

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キーワード: #サステナビリティ

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