長崎県壱岐市、「再エネと水素」を活用したトラフグ養殖

記事のポイント


  1. 長崎県壱岐市が脱炭素チャレンジカップの環境大臣賞グランプリを受賞した
  2. 水素電池を組み合わせ、再生可能エネルギーの拡大を図る実証実験を始めた
  3. 水素製造時の生成酸素や排熱も有効活用する

地球温暖化防止全国ネット(東京・千代田)は2月6日、「脱炭素チャレンジカップ2024」を開催した。長崎県壱岐市が脱炭素チャレンジカップの環境大臣賞グランプリを受賞した。再生可能エネルギーの拡大を図るため、再エネと水素電池を組み合わせた「トラフグの陸上養殖」を始めた。(オルタナ編集部・下村つぐみ)

今年で14回目となる「脱炭素チャレンジカップ2024」が開催された

脱炭素チャレンジカップは優れた脱炭素への取り組みを表彰する、地球温暖化防止全国ネットが主催する全国大会だ。今年で14回目を迎えた。

学校や企業、自治体から140を超える応募があり、そのうち24団体がファイナリストに残った。

今回、環境大臣賞グランプリに輝いたのは長崎県の壱岐市だ。同自治体は、2019年に国内初の「気候非常事態」を宣言し、2050年までに再生可能エネルギー100%の島の実現をめざす。

同自治体は、今後島内で再生可能エネルギーを効率的に活用・拡大するため、地域の民間企業や東京大学と連携し、再エネと水素電池を組み合わせた「トラフグ養殖」を実証実験として始めた。

養殖で必要な電力は、日中は太陽光発電から供給する。太陽光発電で余った電力を用いて水を電気分解し、グリーン水素を製造。夜間は、蓄えたグリーン水素を燃料電池で発電することで電力を賄うといった仕組みだ。

この仕組みにより、2022年度の養殖場のCO2排出量は約41.6トン削減できたという。水素製造時に生成される酸素や排熱も、養殖魚の生育に有効活用することで、さらなる化石燃料の削減を可能にした。

同取り組みへの視察は30件に達し、経済波及効果は1500万円以上を見込んでいるという。今後は脱炭素しまづくりの活動を教育・観光資源としても活用していく予定だ。

壱岐市役所・総務部SDGs未来課の篠崎道裕課長は、「気候変動問題は危機的状況だという切実な思いから、再エネを増やしたいという思いでこれまで取り組んできた。まだ問題も多いが、その分伸びしろもある事業であるため、壱岐だけでなく、県内の離島、そして、日本全体に広められるように努力していきたい」と語った。

環境大臣賞の企業・自治体部門では、大手ゼネコンの大成建設と大手総合化学メーカーであるカネカがタッグを組み、開発した「ビル壁面を活用した太陽光発電システム」が金賞を受賞した。

壁や窓などと一体化した太陽光発電パネルをビルに導入することで、街中での再生可能エネルギー性能の強化とZEBの拡大に貢献する。ガラスメーカーやサッシメーカー、デベロッパーと協業し、これまでに10件を超える導入事例を生み出しているという。

このほか、茨城県でビーチクリーン活動を行うLove Earth Dayと、不要な服や本を回収・販売し、その収益を寄付するプロジェクトを進める国本小学校がマクドナルドオーディエンス賞とのダブル受賞を果たした。

地球温暖化防止全国ネットの高田研理事長は、「今年の大会から青年環境NGOなどに所属する若者に議論に入ってもらった。脱炭素チャレンジカップをどのようにして活かしていくかについて、色んな人からアイデアを募り、続けていきたい」と締めくくった。

「脱炭素チャレンジカップ2023」受賞者一覧

■環境大臣賞(5件)

グランプリ: 壱岐市(長崎県) 「再エネとグリーン水素で目指せ!脱炭素の島」実現プロジェクト

金賞(学生部門): 愛媛県立西条農業高等学校食農科学科 チームパパイヤ(愛媛県) 青パパイヤグローカルプロジェクト!地域課題解決に向けた取組

金賞(ジュニア・キッズ部門): 取手市立取手西小学校(茨城県) 共創!ワクワクの「脱炭素チャレンジフィールド」

金賞(企業・自治体部門): 大成建設株式会社&株式会社カネカ(東京都) ビル壁面を活用した太陽光発電システムによる脱炭素化の推進

金賞(市民部門): #7年後も「住みやすい街大賞」1位とるぞ!藤沢プロジェクト(神奈川県) 学校断熱を契機とした行政、議会、市民の連携による脱炭素の取組

■文部科学大臣賞(2件)

社会活動分野: 自由の森学園中学校・高等学校(埼玉県) 学園経営における脱炭素化とESDの実践

学校活動分野: 国本小学校(東京都) 「物の命を最大限延ばすために、わたしたちにできること!」

■企業団体賞(13件)

セブン-イレブン記念財団 最優秀地域活性化賞: 山形大学農学部 バイオマス資源学研究室(山形県) お米から肉!~脱脂米糠からの代替肉の製造~

ユニ・チャーム最優秀やさしさでささえる賞: 横浜市立西前小学校(神奈川県) 廃食用油を集めて飛行機を飛ばそう!

ニトリ最優秀夢・未来賞: 杉並区立西田小学校(東京都) 食品ロス削減と脱炭素社会実現のためのミミズコンポスト

日本WPA最優秀未来へのはばたき賞: 南会津町 環境水道課(福島県) 水道事業へ「新!脱炭素化策」-施設建屋の木質化プロジェクト-

レンゴー最優秀脱炭素未来づくり賞: 熊本県立菊池農業高等学校 SDGsプロジェクト班(熊本県) 竹資源を活用した持続可能な地域社会づくりを目指して

いのちをつなぐSARAYA賞: 長野県佐久平総合技術高等学校(長野県) エシカスフードでSAKE文化をリノベーション!

炭素会計アドバイザー協会賞: 東京工業高等専門学校 流体工学研究室(東京都) サボニウス型風車の開発~エネルギー地産地消への挑戦~

タンソ―マンプロジェクトGX推進最優秀賞: 株式会社虎昭産業(東京都) 全社一丸で創意工夫を積み重ねた食品工場の脱炭素への挑戦

SOMPO環境財団最優秀わくわく未来賞: 三豊市立下高瀬小学校(香川県) STOP地球温暖化~もったいない・ありがとう・楽しく~

ウェイストボックス最優秀CO₂の見える化賞: NPO法人環境とくしまネットワーク(徳島県) せとうち「ゴミ箱になった海」ブルーカーボンプロジェクト

オルタナ最優秀ストーリー賞: 株式会社シェルター(山形県) 脱炭素社会を実現する「木造都市®」づくり

気象キャスターネットワーク 最優秀市民・学校エコ活動賞: 西宮市立山口中学校(兵庫県) 未来にひろがれ!緑のカーテン

再エネ100宣言RE Action賞: 株式会社イワタ(京都府) 脱炭素を目指す寝具メーカーの循環型ものづくり

■マクドナルドオーディエンス賞(3件)

・Love Earth Day(茨城県) LoveEarthDay 海で一緒にごみ拾いしない?

・国本小学校(東京都) 「物の命を最大限延ばすために、わたしたちにできること!」

・壱岐市(長崎県) 「再エネとグリーン水素で目指せ!脱炭素の島」実現プロジェクト

■審査委員特別賞

・NPO法人まめってぇ鬼無里(長野県) 「きなさごこちPJ」里山の森と暮らしをつないで脱炭素地域に

優秀賞: 株式会社渡会電気土木(山形県) 地域資源のリサイクル活用と再生可能エネルギーの普及と開発

優秀賞: Love Earth Day(茨城県) LoveEarthDay 海で一緒にごみ拾いしない?

優秀賞: 前田記念武蔵小杉クリニック(神奈川県) “コスト削減への取り組み”

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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