だが、イスアの代表で徳島出身のたほりつこは「この場の魅力は地霊(ゲニウス・ロキ)、ゲニウス(守護霊)とロキ(場所・土地)、大地の霊、大地の精気そのものです」と、この問題にあえて踏み込み、農村舞台を触媒としたアートプロジェクトを始めた。スピリチュアルな表現としての伝統と現代の接点である。
2009年、地元の青年団を母体に人形浄瑠璃の丹生谷清流座が結成され、活動している。「杜舞台」はこうした伝統芸能を射程に収めた写真コンテストも実施し、援護する。東京展では同座の上演も行われ、伝統の粋を堪能できた。
たほと現代アーティストたちは、奥深い森に抱かれた那賀町の空気感を大切にする作品展示を現地で行ってきた。東京展ではその片鱗が窺える。
たほの「杜舞台 巡礼-序章-」は、舞台小屋のインスタレーション作品。闇の中にひっそり浮かぶシルエットは、人の脳裏に浮かぶ、もろくはかない記憶=歴史であり、人にとって大切なものが何か問いかける。