オルタナ総研統合報告書レビュー(29):荏原製作所

記事のポイント


  1. 企業価値向上と成果の分かち合いのために、コーポレート・ガバナンスに取り組む
  2. 統合報告書に取締役会での議論事項や議案別時間を開示
  3. 2002年にガバナンス改革を開始し、現在でも常に最良を追求している

荏原グループ統合報告書2023では、「コーポレート・ガバナンス体制の変遷」「2022年12月期の取締役会での議論事項」「取締役会の実効性評価」等コーポレート・ガバナンスに関する情報が数多く開示されています。同社のガバナンス改革は、2002年に開始し、現在でも常に最良を追求しています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

荏原グループ統合報告書2023

「荏原製作所コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」は、
1.「創業の精神」、「企業理念」、「荏原グループCSR方針」から構成される「荏原らしさ」を当社グループのアイデンティティ/共有すべき価値観と定める
2.「荏原らしさ」のもと、持続的な事業発展を通じて企業価値を向上させ、その成果を株主をはじめとする様々なステークホルダーと分かち合うことを経営上最も重要な事項と位置付ける
3.その実現のために、常に最良のコーポレート・ガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組む
と記しています。

2022年12月期に取締役会で議論された主な事項は、「中期経営計画の最終年度進捗報告と3か年総括 」「新中期経営計画の策定及び長期ビジョンの見直し」「新中期経営計画の中核テーマ実現のための対面市場別組織への移行」「2023年度経営計画、各事業の経営計画及びKPI」「サステナビリティに関する中長期戦略(カーボンニュートラル、TCFD提言に基づく情報開示への対応策、人材育成、ダイバーシティ &インクルージョン等)」「取締役会の実効性評価及びそのフォローアップ」と多岐に亘ります。

議案別年間総審議時間の状況として、中長期的議論を行う審議事項に重点的な時間配分がなされたと述べられています。

同社のガバナンス改革は2002年、執行役員制を導入し、定款上の取締役員数削減から始まりました。

2008年から独立社外取締役を招聘し、2015年に仕組み化を進め、より実効性を向上する為に、指名委員会等設置会社に移行しました。

2019年から更なる透明性・公平性を確保する為、独立社外取締役が取締役会議長に就任し、2022年から、取締役のパフォーマンスの深化とガバナンス・ツゥー・バリュー(Governannce to Value)への貢献に向け、ESG重要事項を取締役会で定期的に審議し、コーポレートガバナンス・コード基本方針で定める役割資質要件に則して各取締役の評価を実施しています。

同社は、常に最良のコーポレート・ガバナンスを追求すると「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」に謳っています。

次回統合報告書では、更なる進化・深化した取り組みを紹介されていかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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