企業価値向上はESG数値化とエンゲージメントが要、柳氏強調

記事のポイント


  1. 日本企業は、ESGを投資家に訴求できていない
  2. 柳モデルは人材や特許の価値などESGの価値を数値化するもの
  3. 企業価値向上には数値化と、投資家とCFOの真剣勝負のエンゲージメントが要

「柳モデル提唱者」の柳良平氏は、21日都内で開催されたセミナー「企業価値向上のための非財務価値の潜在化」の中で、「多くの日本企業は、企業価値に結びつくESGを投資家に訴求できていない」と苦言を呈した。それ故、非財務情報の価値が、企業価値(PBR)に織り込まれず、PBR1倍割れが状態化していると指摘した。3つの打開策を提言し、その要はエンゲージメントだと強調した。(オルタナ総研フェロー・室井孝之)

「柳モデル」とは、柳良平アビームコンサルティングエグゼクティブアドバイザーが提唱した「ESGの価値は、市場付加価値としてPBR(株価純資産倍率)1倍以上の部分に反映されるという仮説」からESGの価値を数値化するものだ。

非財務資本とエクイティ・スプレッド(株主の期待する利益率をどれだけ上回っているかを測定する指標)の価値関連性を数値化する。

柳氏は、「本来ESGの国(「論語と算盤」の国)と言っても過言でない日本企業の潜在価値を明示できればPBRは確実向上できる。人材、特許や研究の価値、環境問題への対応などが株主から認められれば、必然的にPBRは1倍以上になる」と述べた。

同氏は、上場企業は東京証券取引所に「資本コストや株価を意識した経営」としてPBR1倍割れ改善が挙げられているが、次の3つのトータルパッケージが企業価値を高めると述べた。

1.短期的にはバランスシートマネジメントや株主還元
2.中期的には研究開発、設備投資、新商品開発などの成長投資を行うこと
3.長期的にはESG(環境・社会・企業統治)、社会貢献と企業価値を同期化すること、言い換えれば無形資産や人的資本の価値を定量化して説明すること

そのベースになるのが、財務的価値だけでなく非財務的価値も織り込んだ高度な企業価値算出とそれを活用したエンゲージメントだと強調した。

「真剣勝負で企業の本質的価値に関する深い議論をする意欲あるCFOと知見の高い投資家のエンゲージメントが、その鍵」と結んだ。

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #ESG

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..