地球とビジネスの未来に、ネイチャーポジティブを

記事のポイント


  1. 気候変動、生物多様性の損失が進む中で、企業はどう立ち向かうか
  2. 自然と共生し、地球の健康を回復させることは、新たな経済の波を生む
  3. 地球とビジネスの未来をどのように豊かにしていけるか

気候変動、生物多様性の損失、自然環境の破壊が進む中で、どう立ち向かうか、政府や企業レベルでの取り組みが日々活発に行われている。しかし、この危機は同時に、未来のビジネスチャンスになる可能性も秘めている。(伊藤恵=サステナビリティ・プランナー)

自然と共生し、地球の健康を回復させることは、新たな経済の波を生み出すキーともなり得るのだ。ネイチャーポジティブという概念を通じて、地球とビジネスの未来をどのように豊かにしていけるのか、その可能性について探っていく。

自然を保護するだけでなく、回復させるネイチャーポジティブ

ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、自然を回復させるという概念だ。この概念は、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに続き、世界の新たな潮流となっている。

生物多様性は、地球上の全ての生物が互いを支え合いバランスを取る状態を指し、人間の生活や経済活動にも不可欠だ。ネイチャーポジティブは、2030年までに生物多様性を回復し、2050年までに自然と共存する世界を目指している。

ワイン用ブドウ栽培で生物多様性に寄与するメルシャン

ワインメーカーのメルシャンは、ネイチャーポジティブの実践として、ブドウ栽培を通して生物多様性の向上を目指す。

長野県上田市にある椀子ヴィンヤードでは、草生栽培を採用し、土壌の有機物を補給しながら雑草の繁殖を抑制し、化学肥料や除草剤の使用を減らすことで、生態系の豊かさを維持。

調査では植物、昆虫、チョウ、鳥の生息している種類を確認し、生態系の豊かさも証明されている。この農園は、以前は遊休荒廃地で生態系が失われていたが、この取り組みにより、生物多様性の質が高い土地として環境省からも認定されるまでになった。

金融機関と連携して取り組む自治体も

那須塩原市は、ネイチャーポジティブ経済の実現を目指し、地元の金融機関と共同宣言をおこなった。これは、自然環境の保全を経済活動に組み込む試みであり、地域社会全体で生物多様性の保護に取り組むことを意味する。

市は、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーとのシナジー効果を目指し、ネイチャーポジティブを主流化することを目標としている。金融機関と連携を結ぶことで、地域の多くの企業を巻き込み、企業が会社経営の主流として、生物多様性保全に寄与していくことを狙う。

ビジネス視点でのコミュニケーションサービスも

博報堂のSDGsプロジェクトが立ち上げた「Nature Positive Studio」では、企業がネイチャーポジティブな未来を実現するためのビジネスアクションの立案からコミュニケーション戦略の設計・実行までを支援している。

このアプローチは、未来の生活者の視点から自然資本を保護し、環境にプラスの影響を与えることで、企業価値向上を叶えるビジネスモデルを創出することを目指す。

このように事例をみていくと、ネイチャーポジティブは、ただの環境保護ではなく、新たなビジネスチャンスととらえ、様々な企業や自治体が取り組みをはじめていることがわかる。

企業活動は自然的資本の上に成り立っているという大前提のもと、企業活動を持続可能なものにするため、また更に価値を高めていくためにも、ネイチャーポジティブへの取り組みは、これから社会が積極的に取り組むべき重要なトピックスであると言えるだろう。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性#脱炭素

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