ゼロウォーター・ビルとは: 建物で使用する水を実質ゼロに

記事のポイント


  1. ゼロウォーター・ビルは、節水と排水再利用で建物の水消費実質ゼロを目指す
  2. 米認証機関などが認証、ブラジルのビルが2019年に初の認証を受けた
  3. 日本でもゼロウォーター・ビル仕様の施設が22年に完成、認証を取得したケースも

建物の水消費量を節水と排水の再利用などを駆使して実質ゼロにするというゼロウォーター・ビル(ZWB)がある。米の環境認証であるLEEDなどが認証しており、2019年にはブラジルのビルが初めての認証を受けた。日本でもZWB仕様の初の施設が2022年に完成し、広がりを見せる。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

建物の水使用量を実質ゼロにする「ゼロウォーター・ビル」が日本でも広がりを見せる
建物の水使用量を実質ゼロにする「ゼロウォーター・ビル」が日本でも広がりを見せる

LEEDによると、「ゼロウォーター」の定義は年間の「上水使用量」と「代替水使用量+水源還元量」が年間で同量、ないしは「代替水使用量+水源還元量」が「上水使用量」を上回ることだ。

2018年に米エネルギー省がネットゼロウォータービルについての定義を示したことがきっかけとなった。それから間もなくLEEDが認証を開始。19年にはブラジルのオフィスビルが初の認証を受けた。

ゼロウォーター・ビルが出てきた背景には、水資源の持続可能性を高めていく必要があるためだ。米エネルギー省はネットゼロウォータービルの目標について、「淡水の使用を最小限に抑えることで、劣化や枯渇を最小限に抑えながら、天然の水資源の量と質を維持すること」だと説明する。

日本国内でも18年頃から、ゼロウォーター・ビルについての概念が輸入され、研究や検証が続いてきた。

日建設計のウェブサイトによると、2022年に完成した栗田工業の東京都昭島市内の研究拠点ではゼロウォーター・ビルの概念を取り入れた。日建設計は同研究拠点の設計を手掛けた。

認証を取得するケースも出てきた。大成建設はこのほど、同社の技術センターで国内初の「LEED Zero Water」の認証を受けたと発表した。

大成建設の事例では、2022年10月から2023年9月の期間で検証。23年2月まで雨水利用のみで、23年3月からは雑排水再利用システムを導入した。

雑排水再利用システム導入後に月間で雨水と再利用水の利用合計値が上水利用の値を上回った。年間使用水量では、改修前の雨水利用時と比べて上水使用量は34%削減、雨水と再利用水の使用量は130%増となった。

ただ、日本にゼロウォーター・ビルの概念を取れ入れるには難しさもある。日建設計は「上下水道普及率の高い日本では、井戸水利用の制限、雨水浸透施設設置の制約、再利用水の利用先の制限など、法的な制約も多い」と課題を挙げる。

国内でゼロウォーター・ビルが広がるには「日本の上下水道が抱えている課題や、それを起点とした水災害や環境問題が発生している点を認知し、これらの解決に向けた政策や事業投資への機運が必要と考える」と指摘した。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #SDGs

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