大気中CO2濃度は23年も最高更新、産業革命前の50%増に

記事のポイント


  1. 英NGOが、世界で排出されるCO2を生産者別に紐づけて発表
  2. CO2排出の起因先である石油・ガス・石炭・セメント企業を調査した
  3. パリ協定以降、57の化石燃料生産者だけで世界の8割の排出量を生産している

米国・海洋大気庁(NOAA)は4月5日、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が、2023年に観測史上、過去最高となったと発表した。ほかにも、主要な温室効果ガス(GHG)であるメタンや亜酸化窒素の濃度が過去最高となった。CO2の濃度は、2022年平均から2.8ppm上昇の419.3ppmとなり、産業革命前の水準(約280ppm)から約50%増加したことになる。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

2023年は大気中のCO2、メタン、亜酸化窒素の濃度が過去最高に

NOAAのグローバル・モニタリング・ラボラトリー(GML)は、世界各地の約53の共同サンプリング地点、20の高層タワー地点、および北米の定期的な航空機運航地点から大気サンプルを採取して大気中のCO2などの濃度を測定する。

GMLによると、2023年のCO2濃度の上昇率は、近年見られたような記録的な上昇ペースではなかった。しかしそれでも、前年から2ppmを超える上昇率は、12年連続で続いている。この上昇率は、2014年以前には見られない高さだという。

「2023年の増加は過去10年間で3番目に大きい。化石燃料による継続的なCO2排出量の増加に加え、おそらく、エル・ニーニョ現象に伴う山火事の影響もあるだろう」と、GMLでデータの統合を率いた米科学者シン・ラン博士はコメントした。

■メタン濃度は産業革命前から2.6倍以上に

メタンは、CO2に次ぐ温室効果ガスだ。CO2より量は少ないものの、温室効果は、同量のCO2の28倍ある。

このメタンの濃度も2023年は、前年から10.9ppb上昇し、1922.6ppbとなった。この水準は、産業革命前の2.6倍を上回る。

メタンの上昇率が記録的に高かった2020年(15.2ppb)や2021年(18ppb)、2022年(13.2ppb)ほどではないが、2007年にメタン濃度の再上昇が観測されて以来、5番目に高い上昇率となった。

■亜酸化窒素の濃度も過去最高に

人為的な温室効果ガスである亜酸化窒素の濃度も過去最高を記録した。2023年は前年から1ppb上昇して336.7ppbとなった。これは産業革命前の270ppbから25%高い。

上昇率は、2020年(1.3ppb)や2021年(1.3ppb)の水準を下回った。ここ数十年での大気中の亜酸化窒素の増加は、主に農業の拡大と農業集約化による窒素肥料・糞尿の使用によるものだという。

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #脱炭素

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