■ 企業は「いかに手がかからないか」ばかり
だが、ひとくちに「障がい者」と言っても、身体や知的、精神、発達障がいなど幅広い。
渡邉代表は、「肢体であれば、能力は健常者と変わらない場合が多い。精神障がい者は、ある能力が欠如していても、ある能力がとても高い。どんな時に症状が出るか、本人の強みや弱みを一番知っているのは家族。一緒にカルテをつくっていくことで、働きがいをつくることができる」と語る。
脊髄損傷により車いす生活を送る日本身体障害者社会人協会の田村匡史理事は、「法定雇用率を守るために、企業は障がい者雇用を進めている。だが、採用基準は、いかに手がかからない人か、で止まってしまっている」と話す。
「軽微な作業のみか、健常者と同等の能力を求められるか――に2分しているのが現状。それでは、本人の能力を生かせず、どう夢や希望を切り開いていけばいいのか。会社と目線を合わせづらい」(田村理事)
戦略的CSR研究会の守屋剛理事長は、「障がい者雇用の事例に共通していることは、まず、社内で反対されること」だと言う。
「大企業のCSR・人事・総務担当者は、障がい者雇用を進めたいと思っていても、仕事をなかなか生み出せない。事業部と連携していくことでうまくいく場合もある」と指摘した。
■ 「障がい者雇用で企業は成長する」
『なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか』(中央法規出版)を上梓した横浜市立大学の影山摩子弥CSRセンター長は、「障がい者が職場に入ることで、労働生産性が上がる」と力強い。
殺伐とした職場でも、人のことを気に掛けるようになったり、作業がしやすいように設備環境が整ったりすることで、全体の生産性が上がるのだと言う。障がい者が働きやすくなるということは、おのずと健常者も働きやすくなるのだ。
「障がい者雇用実践セミナー」は全5回シリーズ。次回は12月11日、「障がい者社員がヒーローに」というテーマで、三茶しゃれなあどホール(東京・世田谷)で開催される。