脱・電力会社依存――。自然エネルギーの電気を蓄電池にためて、電力を完全自給する家が各地に登場している。配電網に接続して売電する家庭向けグリッドソーラーと大差ない費用で導入が可能だ。「電力自給の家」を横浜市に訪ねた。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■電力会社依存を反省
佐藤隆哉さん・千佳さん夫妻は今秋、横浜市内に住宅を新築。一見すると普通の家だが、よく見てみれば電力会社からの電線がない。配電網につながない「独立型(オフグリッド)ソーラー」で電気をまかなっているためだ。
「配電網とつながることで、電力会社との『しがらみ』が生まれる。そこから自由になりたい」と千佳さん。NPOバンク等の理事を務め、環境運動家としても知られる田中優氏は、移住先の岡山で独立型ソーラーを使用している。そのことを知った夫妻は、自給エネルギーの普及をめざす団体「自エネ組」の協力を得てシステムを導入した。
屋根には約2キロワットのソーラーパネルを設置。発電した電気は、中古再生したフォークリフト用蓄電池に充電する。容量は565アンペア時で、曇りや雨の日が数日続いても電力消費をまかなえるそうだ。
システムの導入費用は220万円ほど。「売電は念頭になかった」と夫妻は口をそろえる。
「売電収入は電力消費者から集めた賦課金。人様からお金をいただくことは、犠牲の上での得だと思う。犠牲や争いのないエネルギーの作り方と使い方を目指しています」と千佳さんは話す。
隆哉さんも「石油、石炭、ウランなど永遠に再生できないものを使うより、太陽光パネルやリサイクルの蓄電池を使う方が、環境への負荷が少なくて済むのではないか」。
3・11では、電力会社に電気を依存することのもろさが明らかとなった。従来の電化生活への疑問が、佐藤さん夫妻を独立型ソーラーに向かわせた形だ。