「テレビの中ではなく、ここにいます」――青森駅前の性的少数者パレード

今回のパレードは2年目になる。2014年の同月同日、やはり東京のパレードと同時刻に、宇佐美さんと岡田さんともう一人、3人で歩いたのが第一回だ。

「一年前はただ怖かっただけ。歩く距離も短く、プラカードも日本語で書けず英語。絡まれそうな人がいると道をずらした。店もオープンしたばかりで人が来るのかもわからない。それでも、青森でも生きていくんだ、東京の皆だって同じ空の下で歩いているんだと、心細い気持ちを奮い立たせた。それから一年たち、24人も集まってくれて大きな変化だと思ったし、すごくうれしかった」(宇佐美さん)

参加者の一人「圭」さんは、青森市で生まれ育った。そらにじ青森の常連だが、店に来るまでは8年ほど欝でひきこもり。自分がセクシュアリティに迷っているFtXであることを、ほぼ誰にも明かしていなかった。顔が完全にわからないよう猫をあしらった鼻とサングラスをかけた。

圭さんは言う。 「顔を隠しても歩けるよ、ということを他の歩いていない当事者にも見せたかった。スタートするまでは怖かった。けど全国からきた応援のメッセージが読み上げられると、言葉であらわせない感情がぶわっときた。高校生たちが手をふってくれ、うれしかったし『もし彼らの中にセクマイの子がいたら そらにじに来てほしい、一人じゃないからね』とも思えた。最後尾を歩いていたのですが他の参加者さんの衣装の羽などが飛び散っていて『マイナスのイメージを残したくない』と途中からずっと拾って歩くこともできた」

宇佐美さんは言う。「青森はねぶたもあり、お祭りに寛容。一方で『青森に差別は無いから店を出すのは無駄』と言う商店街の人がいたり、医療関係者の中でも性同一性障害ガイドラインが初期の情報で止まっていたりすることも現実。パレードは社会への私たちのカミングアウト。伝わらないかもしれないけど、どこかにわかってくれる人がいる、そう信じるからパレードができる。今はまだ来られない、歩けない人の分も、毎年開催して歩いていきたいと思っています」

Osora ni Niji wo Kake Mashita:http://soranijiamr.web.fc2.com/

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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