地域を活性化する観光ツーリズムと企業連携【戦略経営としてのCSR】

大型資本のホテルと機能面で競争しても勝てない。むしろ、地域のコンセプトに共感する人をターゲットに、そこでしかできない経験を通じて地域のファンを増やし、リピーターを作ることだ。

広告で来る1000人の一過性の観光客ではなく、10人の地域のファンをつくり、繁忙期・閑散期に関係なく繰り返し来てもらうことが地域の経済を支える。また、新しいコンテンツの企画や、事業への参入が誰にでも行いやすい環境を整えることも重要だ。多くの起業家たちが競い合って参画することで街は活気づく。

■マネジメント力の強化がカギ

もう一つの重要な点は、観光産業のマネジメント力の強化だ。観光産業の多くは、スタッフ20人以下の中小規模のオペレーションである。良いビジネスの起業だけでなく、業界として強くなるためには更に広い視野で各マネジメント層を強化する必要がある。安全対策、リスクマネジメント、マーケティング、人材育成、会計、資金調達などそれぞれのレイヤーを強化し、業界内にそれぞれのポジションを用意することだ。

同市でそれを支えているのがクイーンズタウンリゾートカレッジだ。ホスピタリティとツーリズム、2つの軸を中心に、観光業のマネジメントに関するナレッジを集積して地域で共有し、起業家を支える。同校は、マネジメント強化のために観光業界で不足しているナレッジを共有し、足りない人材層を補う教育を実践している。

バンジージャンプで有名なHackett社は年間120人を雇用する一方、単に橋から人を落としているのではなくビジネスとしての安全対策やリスクマネジメントを行い、CEOのほか、CFOやマーケティングの責任者を置き、それぞれがキャリアを持つ。同市では、この20年間で、このような会社がたくさん生まれている。データに裏打ちされた対策とツーリズム関係者の誇りを如何に醸成するかに取り組み続けている。

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大久保 和孝

株式会社大久保アソシエイツ代表取締役社長(公認会計士・公認不正検査士)。慶應義塾大学法学部卒。前EY新日本有限責任監査法人経営専 務理事(ERM本部長)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、商工組合中央金庫取締役、セガサミーホールディングス監査 役、LIFULL取締役、サーラコーポレーション取締役、サンフロンティア不動産取締役、武蔵精密工業取締役(監査等委員)、ブレイン パット監査役、他多数の企業等の役員に就任。

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